TVアニメ『僕だけがいない街』を最後まで観た人向けの、二周目の案内です。未見の人はここで閉じてください。誰が犯人かを疑いながら12話を走る緊張は、一周目でしか味わえません。真犯人や結末に触れるところは、押さないと開かない箱に入れました。
疑いのノートを閉じる
一周目の僕のノートには、登場する大人の名前が並んで、その横に「怪しい度」が星で書いてありました。星が増えたり減ったりするのが楽しかった。でも最終話のあと見返したら、星の数が当たっていたかどうかより、星をつけなかった人の場面を何も覚えていないことのほうが気になったんです。喜好
星をつけなかった人って、レンが疑ってなかった人?
そう。疑わなかった人を、僕はちゃんと観てなかった。二周目はそこを観る回にする。
再上映という仕組み
Wikipediaの記事によると、原作は三部けいさんの漫画で、TVアニメは監督が伊藤智彦さん、シリーズ構成が岸本卓さん、アニメーション制作がA-1 Pictures。2016年1月から3月まで放送された全12話です。事實[1]
原作のあらすじによると、売れない漫画家の藤沼悟には「再上映(リバイバル)」と呼んでいる力があります。本人が望むかどうかに関係なく働き、そのすぐあとに起きる「悪いこと」の原因がなくなるまで、悟を直前の場面へ何度も引き戻す、という力です。人物紹介によれば、悟は思ったことを無意識に口に出してしまう癖の持ち主でもあります。事實[1]
二周目の一つ目の見どころはこの癖です。一周目には、独り言の多い主人公だなと思っただけでした。二周目は、悟の口から漏れた言葉を、そばにいる誰が聞いていたかを確かめてみてください。心の声のつもりの言葉が、聞かれている。この作品は、そういう「漏れた情報」の受け取り手を、画面のどこかに置いているように見えます。解讀
12の題名を並べる
各話の題名は、第一話「走馬灯」、第二話「掌」、第三話「痣」から始まり、第九話「終幕」、第十話「歓喜」、第十一話「未来」、第十二話「宝物」で終わります。事實[1]
一周目には、題名をほとんど読んでいませんでした。二周目に並べてみると、最初の題名は死の間際に見るものの名前で、最後の題名は持ち続けるものの名前です。振り返る話から、持って帰る話へ。12話が、短い漢字の言葉の列で一本の線になっているのが分かります。第九話の題名が「終幕」なのに、そのあとまだ三話あることも、二周目に気づいた構造です。解讀
終幕のあとに歓喜がくるの、なんか好き。終わったと思ったら、まだ続きがあるの。喜好
1988年の二月
原作のあらすじでは、悟は1988年2月15日に戻ります。連続誘拐殺人事件がこのあと起きるはずで、悟はそれを食い止めようと動く。事件では雛月加代と杉田広美、二人のクラスメイトが殺され、犯人として逮捕されたのは、悟の年上の友人だった白鳥潤(ユウキさん)でした。事實[1]
二周目の二つ目の見どころは、日付です。一周目の僕は、カレンダーを「残り時間」として観ていました。二周目は、同じ日付が出るたびに、その日を守ろうとしている大人が誰なのかを観ます。子どもの悟が一人で走っているように見えた場面でも、後ろに誰かが立っていることがある。解讀
手を貸した大人を数える
原作のあらすじによると、悟たちは加代をかくまっていることを母の佐知子に打ち明けます。佐知子は担任の八代学に連絡し、次の日に加代の家を訪ねる。加代は祖母のもとに預けられ、その後、八代と教育委員会が取り計らって、悟と同じ学校にまた通えるようになります。事實[1]
ここがノートを書き直したいところです。二周目は、手を貸した大人を一人ずつ書き出し、その人がいつ、何を知って、何をしたかを並べてみてください。一周目には、助けてくれる大人が出てくるたびに安心していました。二周目に同じ場面を観ると、安心の置き場所そのものが、作り手の仕掛けに見えてきます。解讀
結局·真相真犯人(原作のあらすじ)點擊展開
原作のあらすじによると、八代は、悟が「誘拐犯がいる前提で動いている」ことを見抜き、悟を自分の敵だと認めます。真犯人は自分だと八代が明かすのは、尾行する車の中。悟は車ごと湖に沈められ、助け出されたあとも植物状態のまま、母に看護されて15年を過ごします。
二周目は、八代が登場するすべての場面で、八代がどこを見ているかを観てください。一周目には面倒見のいい先生の目線だったものが、二周目には別の意味を持ちます。親切の場面そのものは一つも変わっていないのに、受け取り方だけが入れ替わる。僕の研究テーマ「一話の情報が後からどう読み替わるか」の、いちばん苦い教材でした。解讀[1]
一周目、私その先生のこと、いい人だなって思ってた。……二周目、観るのちょっと怖いな。喜好
怖かったら、先生以外の大人を観る回にしてもいい。佐知子さんとか。手を貸した人は、一人じゃないから。
ガラスの前に立つ人
記事の概要によれば、原作者の三部けいさんはインタビューで、明るいガラスの前に雛月が立つ場面について、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』で水族館のガラスの前にラムがいる、あのイメージだと語っていることが紹介されています。事實[1]
これは原作についての発言ですが、二周目のアニメでは、原作者のこの言葉を手がかりに、雛月と光の位置関係に印をつけたくなりました。三つ目の見どころです。誰かが光の前に立つとき、その人の顔は暗く、輪郭だけが見える。雛月という人物の見え方を、そのまま絵にしているように僕には見えます。解讀
最後の題名に戻る
四つ目の見どころは、題名の列をもう一度読むことです。第十二話の「宝物」を観終えたら、第一話の「走馬灯」に戻ってください。走馬灯は、一人で見るものです。宝物は、誰かと分けられるものです。作品の題名は「僕だけがいない街」なのに、最後の題名は一人きりの言葉ではない。その差が、この12話で悟が手に入れたものに見えます。解讀
結局·真相眠りのあと點擊展開
15年の眠りのあと、悟のまわりに誰が残っていたか。二周目は、第一話で悟のまわりにいた人の数と、最終話で悟のまわりにいる人の数を数えてみてください。人物紹介では、悟は人間関係が希薄な人とされています。数の差が、題名の「宝物」の中身だと僕は受け取りました。解讀
数えるの、いいね。怖い人を見張るより、増えた人を数えるほうが、私は二周目観られそう。喜好
二周目は、疑いの星をつけるかわりに、手を貸した大人の名前を書き出しながら。第一話で、悟の独り言を誰が聞いているかから始めてみてください。