日本のアニメーションの「はじまり」は、どこにあるのか。ガクが「しおりのある部屋」に持ってきたのは、100年以上前の、たった4分の作品の話でした。
4分だけのお話が、100年以上も残っているんですか? ふるさとでは、そんなに古い幻術はもう誰も覚えていません。
1917年の三つの作品
半年のあいだに三本も。同じ年に、何人もの人が同じことを思いついたんだ。
そう。それに、その頃は大きなスタジオなんてなかった。国産アニメーションの最初の頃は、少ない人数で、まるで家内制手工業みたいに作っていた、と紹介されているよ。事實[3]
町内会の手づくり行事みたいなものかな。誰かが言い出して、数人が夜なべして形にする。産業になる前の、最初の一歩だね。解讀
漫画家が描いた動く絵
幸内純一は、もともと政治漫画を描いていた人です。漫画雑誌『東京パック』の同人となり、新聞社では一面の政治漫画を担当していました。1917年、興行の小林商会からの依頼で『なまくら刀』を製作します。事實[2]
一枚の絵で世の中を切り取ってきた人が、絵を動かす仕事を頼まれた。僕はそこにぐっとくるんだ。一コマで笑わせる技術と、動きで笑わせる技術は、近いようで違うから。解讀
2分の断片に前半が見つかった
三作品の中で、残っていると確認されていたのは『なまくら刀』だけでした。それは2分間の版で、映像文化史家の松本夏樹氏が持っていた可燃性の染色フィルム(黄)から、2008年にデジタルで復元されたものです。事實[1]
その後、国立映画アーカイブの所蔵品の中から、別の染色フィルム(緑)が見つかります。寄贈された「南湖院コレクション」の中で、線画アニメーションの断片と、自転車の曲乗りを写した実写の断片のあいだに、つなぎ込まれていたのです。調べると、2分版は作品の後半が中心で、新しく見つかったほうは前半が中心でした。事實[1]
探しものが、ずっと自分の家の引き出しにあったみたいな話だね。
古い写本の綴じ目から、なくした最初のページが見つかったときの気持ちが、少し分かる気がします。
近いけど、ここが違って。本ならページの順番で探せるけど、フィルムは別の断片とつながれてしまうと、題名がなくて気づきにくい。だから時間がかかったんだと思う。有依據的推測
二つを合わせて作られた[デジタル復元・最長版]は、16fpsで4分。黄と緑の色の違いは無理にそろえず、それぞれの素材の特徴を生かす形で仕上げられました。事實[1]
知らずに観てもいい?
ねえガク、ここまで聞いてなんだけど、こういう歴史を知らずに観ても、いいのかな。
……いい質問だ。僕はつい、背景を全部並べてから「さあどうぞ」って言いたくなる。でも4分なんだから、先に観ちゃうのがいちばんかもしれない。
ひとつだけ渡すなら、刀を買う場面。侍が「なまくらや」の番頭に小判4枚を払って刀を手に入れるところなんだ。これは新しく見つかった前半に入っていて、それまでは確認されていなかった場面だよ。事實[1]
番頭さんの顔、見てみたい。ずるそうなのかな。
全体を通して見られるようになって、初めてはっきりしたことがあるそうです。この作品が、四コマ漫画のような起承転結の組み立てになっていたこと。解説はそう伝えています。2分版ではあっという間に過ぎていた「起」と「承」が、最長版ではぐっと長くなっています。事實[1]
四コマの組み立てで、動きを見せる。政治漫画を描いてきた人の手つきが、そこに出ている気がする。解讀
侍と番頭さんの場面、シオルも見てみたいです。4分なら、星読みの合間にも観られますね。
現存する日本最古のアニメーションは、長いあいだ「後半だけ」だった。前半は国立映画アーカイブの所蔵品の中で、別のフィルムのあいだにつなぎ込まれて眠っていた。