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動畫·漫畫小知識

『王立宇宙軍』はスプーンの議論に1日2時間

1987年のアニメーション映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』では、文字も数字も作られ、食器や服のデザインまで現実から少しずらして、その国のものに見せています。世界の制度から作品を読むガクが、生地の荷を届けたアトリエで、ルカーノにスプーンの話をしました。

適合這樣的人
細かく作り込まれた世界を眺めるのが好きな人へ。服や道具のデザインから映画に入りたい人にも。
劇透範圍
無劇透 物語の出発点(見下されている王立宇宙軍で張り合いのない日々を送る士官シロツグが、史上初の宇宙飛行士に志願し、仲間とロケットの打ち上げを目指す)と、作中の文字・数字・道具や服のデザインの作り方、GAINAXの設立と若いスタッフ、題名の由来まで。打ち上げ計画のその後、登場人物たちの行方と結末には触れません
發言的人
Gaku × Lucano
主張的種類: 事實 作品中的觀察 有依據的推測 解讀 喜好
目錄 共 5 節·約 5 分鐘
  1. 見下された宇宙軍
  2. この世界のスプーンは何か
  3. 濁点はヒゲを一画
  4. 24歳の会社の最初の一本
  5. 初めて観る人への入口

夕方、原宿のルカーノのアトリエ。イタリアの小さな工房から取り寄せた生地が、ようやく作業台に届きました。運ぶ道筋を一緒に考えてくれたのはガクです。包みを開ける前に、ルカーノはコーヒーを二つ淹れました。お礼に話を聞かせて、と言われたガクが選んだのは、一本の古いアニメーション映画でした。

見下された宇宙軍

Lucano

ガクさん、今日も本当に助かったよ。この織り目、見て。惚れぼれする。さあ、お礼に何か話して。ガクさんの話は長いけど、僕は好きなんだ。

Gaku

はは、今日は短くするよ。……たぶん。生地の話に少し似た映画の話なんだ。

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』は、1987年公開のアニメーション映画で、製作はGAINAXです。宇宙へ行く最初の人間になろうと、ひとりの士官が手を挙げる話です。名前はシロツグ。所属は王立宇宙軍で、国はオネアミス王国。地球とどこか似た星にある国です。仲間たちと挑むのは、ロケットの打ち上げです。事實[1]

シロツグは、宇宙軍の仕事に張り合いを感じていません。あこがれていたのは、水軍のジェット戦闘機乗りでした。宇宙軍に入ったのは学校の成績で決まったことで、望んだ道ではないのです。その宇宙軍も、世間の評判は散々。失敗ばかりで何もしない軍隊だと笑われ、「落第軍隊」と見下されています。事實[1]

Lucano

見下されている軍隊か。服でいえば、誰も袖を通さない制服みたいだね。解讀

Gaku

僕が惹かれるのは、そういう組織にも暮らしがあるところなんだ。予算があって、決まりがあって、そこで働く一人がいる。食堂でいえば、客の少ない店の厨房にも、毎朝ちゃんと仕込みをする人がいる。解讀

この世界のスプーンは何か

Gaku

ここからが本題。ルカーノ、この映画の作り手たちは、ある問いだけで1日2時間も話し合ったんだって。何だと思う?

Lucano

服の話……じゃないよね。ロケットの形かな?

Gaku

スプーン。

この世界のスプーンとは、そもそも何なのか。それを話し合うだけで、1日に2時間を使いました。助監督の樋口真嗣さんは、デザインのスタッフと、道具の材質や形について何度も議論を重ねています。制作は1984年に始まり、世界観づくりとデザインに1年以上をかけました。事實[1]

Lucano

スプーンに2時間! 僕はその人たちが大好きだな。ボタン一つで一晩悩むのと同じだよ。喜好

Gaku

僕は子どものころ、空想の国の法律と通貨まで決めて、家族に説明して首をかしげられた。でも食器までは決めなかった。この話を読んで、決めればよかったと思ったよ。喜好

戦闘機とコーヒーカップが、同じ会社の製品に見えてはいけない。監督の山賀博之さんはそう考えて、デザインの中心を一人に任せず、大勢のデザイナーに描いてもらいました。一人だけだと、どれも同じ線になってしまうからです。事實[1]

Lucano

それ、すごく分かる。一着のコートでも、生地を織る工房とボタンを作る工房は別なんだ。手が違うから、同じ服の中に違う手ざわりが生まれる。解讀

Gaku

産地が違う、ということだね。生地の荷を運ぶとき、僕はいつも、どの町を通ってきたかを考える。この映画の道具にも、通ってきた町がありそうだ。解讀

濁点はヒゲを一画

オネアミスの字は、右下にヒゲを一画足すと濁音になります。二画なら半濁音。日本語のカナと同じく、一字が一つの音を表す音節文字です。事實[1]

Lucano

ヒゲを一画。刺繍のステッチみたいだ。一針足すだけで、別の音になる。解讀

Gaku

僕は12進数のほうに引っかかった。数え方の決まりは、市場や税の決まりと一緒に育つものだから……ごめん、またやった。長くなってる。解讀

Lucano

いいよ、コーヒーはまだあるから。

脚本づくりの段階で、狙いは「現実のなかのファンタジー」でした。食器や服などのデザインを、現実から少しだけずらしています。物語の背景になる宗教も、この映画のためだけに用意されました。服のほうが人より大きく動く。作画監督の一人、森山雄治さんは、たるみのある登場人物の服に、そんな動きを描き足すことがありました。事實[1]

Lucano

人より動く服! ガクさん、それだよ。僕は、着ている人が止まったあとも少しだけ揺れている服が好きなんだ。どんな揺れ方をしているのか、自分の目で確かめたい。喜好

24歳の会社の最初の一本

社名の「ガイナックス」は、米子の言葉の「がいな」がもとです。「どでかい」という意味で、米子は赤井孝美さんの出身地。株式会社ガイナックス(GAINAX)は、この映画を作るために、1984年12月24日に設立されました。事實[2]

題名は、喫茶店で生まれました。企画を練っていたころ、打ち合わせの最中、隣の席の人がロイヤルミルクティーを頼みます。山賀さんがとっさに思いついたのが「ロイヤル・スペースフォース」で、日本語にして「王立宇宙軍」。山賀さんは当時24歳、スタッフの平均も24歳でした。プロとしての実績を持たない若い集団に、全国ロードショーの映画が任される。異例のことでした。事實[1]

Lucano

ミルクティーから宇宙軍! 24歳か。僕が会社で朝から晩まで服の絵を描いていたころより若い。……ちょっと悔しいな。喜好

Gaku

社名に地元の言葉を入れて、最後にXを足す。足もとの言葉と、外への憧れが一つの名前に同居している。若い人たちの会社らしい名前だと、僕は受け取った。解讀

初めて観る人への入口

Gaku

入口は、序盤の主人公の顔つきを覚えておくこと。張り合いのない日々の顔だね。それから、看板や食器や乗り物を、少しゆっくり眺めてほしい。説明はされないけど、全部その国の品物なんだ。喜好

Lucano

僕は袖口と裾を観るよ。観終わったら、どの服がどの工房で作られたか、勝手に決めてガクさんに報告する。喜好

Gaku

それは聞きたいな。僕も今回は設定を調べすぎないで観直してみる。見るのはスプーンだけにしておくよ。……できるかな。喜好

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の作り手たちは、文字や数字を作り、食器や服のデザインも現実から少しずらして、その国のものに見せた。道具の形や材質をめぐる話し合いでは、「スプーンとは何か」の一点だけで1日2時間をかけた、という。

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