一話ぶんのアニメには、たくさんの人の名前が流れます。なかでも「絵コンテ」「演出」「作画監督」は、どれも画面づくりの中心にいそうで、違いがわかりにくい役職です。今回はレンが制作会社の公式の説明を並べ、スイが「それを受け取る側」の目で問いを返します。
絵コンテ、演出、作画監督……。シオルには、どれも「絵のいちばん偉い人」に聞こえます。
絵コンテは「設計図」
東映アニメーションの企業サイトの説明では、絵コンテはシナリオから起こす絵です。演出のやり方などを各スタッフにわかってもらうための説明用の絵で、作品にとっての設計図にあたる、と書かれています。事實[1]
もう少し踏み込んで書いているのが、バンダイナムコフィルムワークスが出している採用サイトです。脚本を出発点に、カット割りや秒数、台詞、効果音、カメラワーク、画面の構成といった、その話数を組み立てるのに要る要素を目に見える形にするのが絵コンテだ、とあります。事實[2]
秒数まで入っているのが大事なところだと思う。どの場面を何秒見せるかが、この段階でいったん決まる。僕は、絵コンテは「時間の設計図」でもあると思ってるんだ。解讀
時間の設計図……。吟遊詩人が歌う前に、節と間を書きとめておく楽譜に近いですか?
近いけど、ここが違って。楽譜なら歌い手が一人で読めばいい。絵コンテは、たくさんのスタッフに演出のしかたを伝えるための絵なんだ。有依據的推測
台詞も、もう入っているんだね。
うん。そのあと、カットごとにもっと細かく詰める「レイアウト」という段階もあるよ。
セブン・アークスの採用サイトによると、レイアウトは、絵コンテで決まった流れを一つひとつのカットへ細かく落としこむ段階です。カメラアングルやキャラクターの動き、背景、素材などについて、後に続く各部署へ仕事を割り振るための設計図の役目も果たす、と紹介されています。事實[3]
演出は「その一話」に責任を持つ
東映アニメーションの採用サイトによれば、演出が受け持つのは担当する話数です。その話数に責任を負い、どんな映像に仕上げていくかを考えます。同社の場合、それぞれの話の方向性を決めるときに中心となるのも演出だ、と書かれています。事實[4]
同じページによると、TVシリーズの映像全体をまとめる役職のことを、同社では「シリーズディレクター」と呼びます。一話一話のつながりに気を配りながら、作品全体をどう面白くするかを考える役割だそうです。事實[5]
全体を見る人と、一話を預かる人……。冒険者ギルドの長と、依頼ごとのパーティのリーダーみたいなものですか?
整理すると、シリーズ全体を見渡す人と、一話を預かる人がいる。だから同じ作品でも、回によって画面の手ざわりが少し違って感じられることがあるんじゃないかな。仕組みとしては、各話ごとに演出の判断が積み重なって……有依據的推測
でも、その違いに気づいたとき、観ている人はどう感じるんだろう。私は、知らない人の筆跡を見つけたみたいで、少しうれしかった。喜好
……あ、そうか。僕は「違いがある理由」ばかり並べてたけど、違いに気づくこと自体が楽しいんだよね。
作画監督は「絵の質」を担う
アニメーターの道筋として東映アニメーションの採用サイトが書いているのは、まず動画で経験を積み、次に原画へ進む流れです。そこから腕を磨いて評価されれば、作画監督として絵のクオリティーを受け持ったり、キャラクターデザインを任されたりする、とあります。事實[6]
たくさんの絵を何人かで分けて描くなら、絵柄や表情のばらつきを整える役が要るはず。「クオリティーを担う」っていうのは、そこを見ることなんだろうと僕は理解してる。有依據的推測
同じ人物が、どの場面でも同じ人に見えるように。それって、すごく静かな仕事だね。解讀
答えは言わないでおくね。次に観るとき、エンドクレジットの「絵コンテ」と「演出」の名前が同じか違うかだけ、見てみない?
名前を見たあとで、もう一度その回の好きな場面を思い出してみる。それも楽しそう。
クレジットの名前が、地図に見えてきました。シオル、次は最後の一行まで目を離さずに見ます。
絵コンテは秒数まで入った設計図、演出はその一話の責任者、作画監督は絵の質の番人。クレジットの数行は一話がどう分担されたかの地図になっている。