最初から主人公として生まれたキャラクターばかりではありません。スイが今回持ってきたのは、アトムがまだ「登場人物のひとり」だったころの話です。
アトムさんって、最初から主人公じゃなかったんですか? シオル、てっきり最初から真ん中にいたのだと思っていました。
はじめは『アトム大使』の中に
手塚治虫の公式サイトの紹介だと、地球人と宇宙人がともに生きることと、ぶつかり合うことを描いたSF漫画で、アトムはこの作品で初めて登場した、とあるね。事實[1]
漫画『鉄腕アトム』の作品ページにも、こう書かれています。主役に据えられたのは、『アトム大使』では登場人物の一人にすぎなかったロボット少年のアトム。そのアトムを中心に新しく始めた連載が『鉄腕アトム』だった、と。事實[2]
編集長のすすめ
作品ページには、手塚治虫の著書『ぼくはマンガ家』(毎日新聞刊)の一部が抜き出して載せてあります。『アトム大使』の連載が終わる直前、編集長が、人気のいちばん高かったアトムを主役にした新連載を持ちかけた、という場面です。そのとき編集長は、ロボットではあっても、アトムには血の通った人間らしい性格を与えたい、と話したと書かれています。事實[2]
抜粋を読むと、すすめられた手塚治虫のほうは、最初は少しためらっているように読めた。私の読み違いかもしれないけど。解讀
構成の目で見ると、脇役って、読者が「もっと見たい」と思っても出番が限られている。その飢えがたまっていたところで主役に移すと、最初から待っている読者がいる状態で始められるんだ。有依據的推測
抜粋では、横山隆一の「フクちゃん」の前例にならったことにも触れています。フクちゃんも、はじめは別の連載漫画に出てくる脇役でしかなかったのが、主役になったのです。事實[2]
脇役が主役になる……。ふるさとで、英雄の歌に一行だけ出てきた従者が、人気が出て自分の歌をもらうようなものですか?
近いけど、ここが違って。吟遊詩人なら、その晩のうちに歌を変えられる。漫画は、連載が終わるところで、新しい連載として器ごと作り直したんだ。有依據的推測
「鉄人」から「鉄腕」へ 親はあとから
同じ抜粋によると、アトムが「鉄腕アトム」としてよみがえったのは昭和27年4月。予告では最初「鉄人アトム」と出たものの、重苦しいからと「鉄腕」に改めたそうです。読者に受けたのは連載の一回目で、子どもであるアトムのあとから、その両親が作られる。その順番のおかしさが面白がられた、とあります。事實[2]
子どもが先にいて、親があとから来る家族。私はここが、いちばん好き。家族って、生まれた順番じゃなくて、一緒に暮らしはじめた日から始まるのかもしれない。解讀
子どもが先で、親があと……。妖精の取り替えっ子みたいに、あとから家族になるお話ですか?
少し違うかな。取り替えっ子は入れ替わる話でしょう。アトムは、そこにいた子のところへ、親があとからやってくる。私はそこが、あたたかいと思う。解讀
僕は「読者に受けた」の一言が気になる。作者が狙った笑いと、読者が受けとった笑いが、同じだったかどうかはわからない。でも、その順番のおかしさを、読者がちゃんと見つけていた。有依據的推測
笑いながら、少しあたたかくなった人もいたかもね。解讀
あの髪のかたち
『メトロポリス』では女の子型のロボットが空を飛び、横井福次郎の作品には10万馬力のロボット「ペリー」がいる。キャラクター紹介のページによると、アトムはこの二体をもとに生まれたといいます。ピンと立った髪の毛は、手塚治虫自身の寝癖から思いついたそうです。事實[3]
寝癖、か。完璧なヒーローの記号が、作者の朝の髪から来ている。
そういう小さな生活の跡が、キャラクターを身近にしているのかも。解讀
ヒーローの髪が、寝癖から……。シオルの耳がはねているのも、悪くない気がしてきました。
アトムは別の作品の脇役として生まれ、編集長のすすめで主人公になった。新連載の一回目でアトムにはようやく両親ができた。