目錄
稽古着の入った大きな鞄が二つ、ソファの端に積まれている。アカリの前にはハンバーグとライス大盛り、エマの前にはパンケーキ。少し遅れて来たソウマは、メニューを開かずにドリンクバーだけ頼んだ。
で、何で俺が呼ばれたの。
クイズやるから。三人いないと、出題と回答が回らない。
公式サイトのキャラ紹介から一人ずつ出すの。当たったら、出した人がその作品のどこが好きか言う。Nice! それ最高じゃん、って言える問題をお願いね。
……別に、いいけど。先のことは言わない、でいいんだよな。アカリ、まだ観てないのあるだろ。
ある。だから紹介ページに書いてあることだけ。
甘いもので強くなる人
私から。『僕のヒーローアカデミア』の砂藤力道。「シュガードープ」っていう個性で、糖分をとると力が上がる。で、この人の得意なことは何でしょう。
甘いもので強くなるなら……大食い?
そういう出し方をするってことは、体格に似合わないほうだろ。
正解
お菓子作り。レスラーみたいに大柄な体格で、個性は「シュガードープ」。とった糖分の分量によって、力が倍になる。そして得意なのがお菓子作り。[1]
えっ、そうなの? 自分で作って、自分で食べて、強くなる。完璧なサイクルじゃん。
ヒロアカで私が好きなのは、こういう脇の人まで、ちゃんと自分の持ってるもので戦ってるところ。最初から全部持ってる人の話じゃない。……あ、何巻あるかは帰ったら言う。
大きな体と小さな声
続けてヒロアカ。口田甲司は、背が高くて見た目がいかつい。個性は、何と話せる力でしょう。
機械!
……植物。
正解
動物。「生き物ボイス」という個性で、動物と意思を通じ合わせて、命令を出すことができる。大きくていかつい見た目とは反対に、性格は内気でやさしい。[2]
えっ、動物と? その体格で、内気? 好き。もう好き。
公式の身長は186cm
見た目で決めつけられる人の話、私は弱い。いかついって言われるけど、中身は違う人。
……お前もよく言われてるな。
うるさい。
スパイの家族の昼の顔
私の番。『SPY×FAMILY』のヨル・フォージャー。昼間はどこで働いているでしょう。
花屋。
病院の受付。
正解
市役所。フォージャー家のお母さんで、バーリント市役所の事務職員として勤めている。[3]
えっ、市役所なんだ。花屋、けっこう自信あったのに。
でしょ? 私があの作品で好きなのは、三人ともそれぞれ言えないことを抱えてるのに、晩ごはんの時間だけはちゃんと家族をやろうとするところ。……ただ、尾行の場面はちょっと採点厳しくなるけどね。あの距離はふつう気づかれる。
そこ、毎回言うよな。
フォージャー家の犬
もう一問。フォージャー家の犬、ボンド。あの子が持っている力は?
めちゃくちゃ鼻がいい。
人の言葉が分かる。
正解
未来を予知する力。もとは軍事研究の実験体だった犬で、先のことが見える。[3]
えっ、予知? 犬が?
そう。だからあの家、犬まで秘密持ち。全員が何か隠してて、全員が家族をやってる。ボンドで好きなのは、大きくて白くて、ぼーっとした顔で、すごく大事なものを見てるところ。
ある言葉だけで話す人
じゃあ俺。『呪術廻戦』の狗巻棘。ふだんは、ある言葉しか使わずに会話してる。何の言葉でしょう。
知ってる。おにぎりの具。
……正解。じゃあ、なんでそうしてるか、までが問題。
え、そこまで? ……そういうしゃべり方が好きだから。
正解
言葉そのものが呪いの武器になる「呪言師」の家の末裔だから。うっかり人を呪ってしまわないように、ふだんはおにぎりの具の名前だけで話している。[4]
えっ、そういう理由なの。気をつかってるんだ。
そう。強い力を持ってるほうが、言葉を選んでる。俺はああいう設定に弱い。一語の重さが、作中のルールで決まってる。……支配者の言葉は、ひとたび放たれれば世界を縛る。
……今のは忘れて。
忘れない。メモした。
一度よそへ行った呪術師
もう一つ呪術。七海建人は、一度、呪術師以外のことをしてから戻ってきた人。何をしていたでしょう。
先生!
修行の旅。
正解
会社勤め。一般の企業で働いたあとで呪術師に戻ってきた人で、公式の紹介では「脱サラ一級呪術師」と呼ばれている。[4]
えっ、脱サラなの? 会社員から呪術師って、転職としていちばん珍しいやつじゃん。
俺が好きなのは、この人が働くことを特別扱いしないところ。どっちの仕事も、ちゃんと嫌がってる。裏方をやってる身としては、ああいう大人の言い方がいちばん信用できる。
いつもお金がないベーシスト
『ぼっち・ざ・ろっく!』行くね。ベースの山田リョウは、家はお金持ちなのに、いつも金欠。お腹が空いたとき、何を食べてしのいでいるでしょう。
パンの耳。
人のおごり。
正解
雑草。楽器にお金を使いすぎていつもお金がなく、たまに雑草を食べて空腹をまぎらわせている。[5]
えっ、草? ……それはだめでしょ。ちゃんと食べな。
アカリ、いま本気で心配してる。かわいい。
かわいくない。
私があの作品で好きなのは、ライブの場面の画面の作り方。絵の質感がそこだけ急に変わって、音が色になる感じがするの。
子役時代の評判
『【推しの子】』の有馬かな。子役だったころ、ある評判で知られていた。何秒で、何ができる子役?
三十秒で、台本を覚える。
五秒で、笑う。
正解
十秒で泣ける。小さいころから子役をしていて、そのころ「十秒で泣ける天才子役」の呼び名で通っていた。[6]
えっ、十秒。……それ、つらくないのかな。
そこなんだよね。私が好きなのは、この作品が、上手にできることと、それを続けることの間にあるものを、ちゃんと見てるところ。
フリーレンの公式の紹介
最後は俺。『葬送のフリーレン』の主人公フリーレン。公式の紹介だと、どんな性格だって書いてあるでしょう。
落ち着いてて、やさしい。
クール、で一票。
えっ、ずぼら? 公式がそう書いてるの? そこがいい。
ちなみに勇者ヒンメルの紹介には「自称イケメンのナルシスト」ってある。そのうえで、仲間を大事にして、困ってる人がいたら放っておけない人、とも。[8]
自称なんだ。
そう、自称。……俺があの作品で好きなのは、台詞が短いところ。説明しないで、時間の長さだけで分からせる。短い言葉で、長いものを運んでる。
もぎもぎの人の背の高さ
延長戦。ヒロアカの峰田実の、公式の身長。数字で当てて。
数字はむり。……百二十!
百十。
正解
108センチ。普段は強気だけれど基本は臆病で、それでも土壇場では勇気を振り絞る、と紹介されている。[9]
えっ、俺、二センチ差か。
惜しい。でも外れ。……私が好きなのは、怖いって分かってて前に出るところ。怖くない人が前に出ても、それは別に、すごくない。
アカリ、今日いちばんいいこと言った。
アカリのライスは二回おかわりされ、エマのパンケーキは途中から三人で分けることになった。ソウマのグラスの中身は、ドリンクバーを五往復して、最後はなぜかただの水に戻っていた。
次はソウマが全部出題ね。知らないアニメ、また教えて?
……まあ、なんとかなる。問題は、帰ってから考える。
兄貴、もう考えてる顔してる。