這篇文章尚未翻譯成此語言。目前顯示日文原文。

日常

許可のいらない客席

劇透範圍 無劇透 『ゾンビランドサガ』は、ゾンビとしてよみがえった少女たちが佐賀でアイドルをするという作品の前提と、第3話で唐津駅前のゲリラライブが描かれることまで(ライブの中身と、それより先の展開には触れません)。『ユーリ!!! on ICE』は、主人公が5年ぶりに故郷へ帰り、憧れの選手がコーチを申し出て、アイスショーのために自分の昔の衣装を取り寄せるという序盤の設定まで

『ゾンビランドサガ』と『ユーリ!!! on ICE』の町、佐賀県唐津市へ。駅前でゲリラライブをするつもりで小さなスピーカーを持ってきたカノンと、それを鞄ごと預かったレイ。新しい衣装のスパンコールは、電車の中から少しずつ落ちていた。

適合這樣的人
好きな作品の名場面を、つい同じ場所で再現したくなる人へ。誰かのために作った服が、どう動くかを見届けたい人にも。
發言的人
Kanon × Rei
聖地巡禮 佐賀県唐津市(JR唐津駅の駅前、作中の洋館のモデルになった建物を外から、唐津城の舞鶴公園) 十一月の終わりの日曜、昼前から夕方まで

唐津駅の改札を出たところで、レイは足もとに光るものを見つけた。銀色のスパンコールが一枚。少し先にもう一枚。その先に、もう一枚。たどっていくと、駅前に立ったカノンの背中に行き着いた。肩から提げた大きな鞄の口から、衣装の袖が少しはみ出していた。

Rei

カノンさん。落ちてる。三枚。

Kanon

えっ。……あっ、ほんとだ! ゆうべ、ちょっとだけ足したの。ほんのちょっと。五十枚くらい。

Rei

何で付けた。

Kanon

……のり。

レイは何も言わずに、拾った三枚をハンカチに包んだ。この衣装は、レイが三週間かけて型紙から直したものだった。カノンが次のライブで着る。今日はその前に、どうしても一度、ここで袖を通したいと言われていた。

Kanon

『ゾンビランドサガ』はゾンビアニメなの。舞台は佐賀県で、七人の女の子がアイドルとして活躍する話。それでね、第3話では、さくらちゃんたちがこの唐津駅の前でゲリラライブをやるの。[1]

Kanon

だから私も、ここで一曲だけ! ほら、スピーカーも持ってきた。小さいやつ。

カノンが鞄から手のひらほどのスピーカーを出した。レイはそれを見て、駅前を行き来する人を見て、もう一度スピーカーを見た。

Rei

待って。それは無理。駅前で音を出して歌うなら、たぶん許可がいる。それに、ここは電車に乗る人の通り道。カノンさんが立ったら、誰かが遠回りする。

Kanon

……よかろう、聞き入れて……じゃなくて、そうだよね。アニメの中のことと、現実の駅前は違うもんね。

カノンはスピーカーを鞄に戻した。戻す手が、少しだけゆっくりだった。レイは鞄のほうへ手を出した。

Rei

それ、今日は私が持つ。……代わりの場所は、あとで探す。

二人は駅前を離れて、洋館のモデルになった建物のほうへ歩いた。作品の中でさくらたちが暮らす洋館は、唐津市内の町田川の近くにある、という設定だ。モデルになったのは、旧三菱合資会社唐津支店の本館だという。

Kanon

わあ……本物だ。中に入れる日もあるのかな。

Rei

佐賀県の重要文化財になってる建物。開いてる日かどうかは、今日は調べてない。外から見るだけにしよう。写真は歩道の端から。入口の前は空けておく。[4]

Kanon

はーい。……レイさん、今日、なんだか先生みたい。

Rei

ミサさんの真似。

建物を見上げてから、カノンは川のほうを向いた。レイが自分の用事を話し始めたのは、そのときだった。

Rei

私がここに来たかったのは、もう一つの作品のほう。『ユーリ!!! on ICE』の主人公の故郷、長谷津は、この唐津市がモデルの町。[2]

Rei

主人公は、それまでデトロイトを拠点にしてた。そこを離れて、五年ぶりに長谷津の実家へ戻ってくる。そしたら、ずっと憧れてた世界のトップ選手がいきなり現れて、自分がコーチをやるって言い出す。[2]

Kanon

憧れの人が、自分の町に来ちゃうの!? 私だったら、気絶しちゃう。

Rei

待って、ここからが衣装。町ぐるみのアイスショーがあって、憧れの選手はそのために、昔自分が着た衣装をわざわざロシアから取り寄せる。[2]

Rei

ここから私の解釈。人の衣装を着るって、距離の話。遠くから見てた人の服に、袖を通す。体に合わない部分を、自分で埋めていく。氷の上での二人の距離は、たぶんそこから変わり始める。それに布。演目ごとに違う。滑ったときの裾の広がり方で、その人が何を見せたいかが分かる。私はそこばっかり止めて見てた。

そこまで一気に話して、レイは口を閉じた。

Rei

……今の、長かった?

Kanon

ぜんぜん! もっと聞きたい。レイさん、私の衣装を直してるときも、そういうこと考えてたの?

Rei

考えてた。カノンさんはターンで回りすぎるから、裾は重めの布にした。……のりのことは、まだ許してない。

Kanon

うっ。ごめんなさい。

昼は駅の近くの食堂で、二人とも定食を頼んだ。カノンは財布の中身を確かめてから、いちばん安いのにした。レイは何も言わずに、自分の小鉢を一つ、カノンの盆に移した。

午後は唐津城へ向かった。唐津駅から歩いて十五分ほど。廃城のあと、本丸は舞鶴公園になり、明治十年に公園として整備されて開放された。いまの天守は、昭和四十一年に建てられた模擬天守だ。

Rei

別名は舞鶴城。城を真ん中にして砂浜が左右に延びてて、それが翼を広げた鶴に見えるから。[3]

Kanon

鶴の翼……! 衣装の袖にしたい。

Rei

のりは使わないなら、考える。

麓から公園の上の広場までは、高さにして三十四メートルある。上がりきったところで、カノンは息を整えた。広場の隅に、人の通らない一角があった。レイはあたりを一度見回してから、カノンの鞄を指さした。出すのはスピーカーではなく、衣装。

Rei

代わりの場所。音は出さない。声も小さく。一曲だけ。客は、私一人。

カノンは目を丸くして、それから衣装を胸に抱えた。上着の上から袖を通すと、裾が風で少しふくらんだ。スパンコールが、また一枚落ちた。レイはそれを拾って、ハンカチに足した。

Kanon

観客が一人って、初めてかも。……き、緊張する。苦しゅうない……じゃなくて、いきます!

カノンは、いつもの礼をした。誰が見ても見事だと言われる、あの礼だった。それから、低い声で歌い始めた。ライブハウスで聴くより小さな声だった。二度目のターンで、足がもつれた。カノンは片手を地面について、すぐに立ち上がった。

Kanon

今のはリハーサル!

レイが、声を出して笑った。カメラの前で作る顔とは、まるで違う顔だった。カノンはその顔を見て、歌の続きを忘れた。それから、もう一度最初から歌った。

一曲が終わって、レイは小さく拍手をした。拍手の音も、ちゃんと小さかった。

Rei

裾は、合ってた。重めにしてよかった。……それと。カノンさん、客が一人のとき、いちばん近くまで来る。ライブハウスでは、客席の真ん中を見て歌ってる。今日は、私を見てた。

Kanon

だって、一人しかいないんだもん。……でも、そっか。ライブハウスのいちばん後ろの人にも、今みたいに歌えたらいいのかな。

Rei

それは、次の衣装の宿題。後ろまで届く袖にする。

帰りの唐津駅で、レイはハンカチを開いた。拾ったスパンコールは九枚になっていた。カノンが申し訳なさそうに覗きこんだ。

Kanon

レイさん。次の衣装、最初から一緒に考えてもらえる? 私、ちゃんと言うことを聞くから。

Rei

条件がある。のりは禁止。スパンコールは縫う。一枚ずつ。

Kanon

はい! ……五十枚、全部?

Rei

九枚からでいい。今日の客席の分。

次の週末、二人は手芸店のスパンコールの棚の前にいた。カノンは、拾った九枚と同じ色を、一枚ずつ選んだ。レイは携帯電話のメモを開いた。「袖:鶴の翼。後ろの席まで届く長さ。のり禁止」。少し考えてから、一行足した。「客席一人。いい顔だった」。それが誰の顔のことか、レイはメモには書かなかった。

本文中的作品

講述者 Kanon 跌倒多少次就站起來多少次的偶像志願女孩 閱讀更多 Kanon 的文章 →

接著讀

全部文章

回到頁首