五本目は『ペントハウス』。私の大好物、ドロドロの頂点よ。誰が何をしたのか、真相も結末も書かない。書くのは、悪女がどうしてあんなに美しく撮られているのか。これ、私がずっと考えているテーマなの。
最終回の前の夜は眠れない
休みの日にまとめて観るのが、私のドロドロの作法。部屋を暗くして、パックをして、ソファで脚を高くして。完璧な準備で観始めるのに、三話目あたりでパックがはがれてることに気づかないくらい前のめりになってる。最終回の前の夜は眠れなかった。翌朝のレッスンは、コーヒーを二杯飲んでから行ったわ。喜好
BS11を運営する日本BS放送のお知らせでは、舞台はヘラパレスという、セレブが住む超高層マンションです。オ・ユニ(ユジン)は声楽家になる夢を絶たれ、いまは不動産仲介の仕事に就いています。声楽講師のチョン・ソジン(キム・ソヨン)は、高校時代のユニのライバル。この二人がユニの娘を通じて再会したところから話が動きだす、と紹介されています。事实[1]
同じお知らせでは、ペントハウスに住む人物としてシム・スリョン(イ・ジア)の名前も挙がっています。事实[1]
好きな理由1:振り切っている
中途半端なドロドロほど、観ていて疲れるものはないの。誰かが少し意地悪をして、少し謝って、少し仲直りする。それなら、私は自分の生活で間に合ってるわ。このドラマは違う。欲も嫉妬も、毎回の最大値を更新してくる。もう笑うしかない、の一歩先まで行って、最後は拍手したくなる。喜好
振付でもそうなのよ。中途半端に大きい動きは、ただうるさい。振り切った動きは、様式になる。このドラマのドロドロは、もう様式。だから私は、芸術って言うの。解读
好きな理由2:悪女の衣装と照明
ソジンは、私の好きなキャラクターの一人。……分かってる、そういう顔をしないで。好きなのは、やっていることじゃなくて、立ち方なの。喜好
あの人は、いつも勝負服を着ている。色は強く、線は鋭く、肩はしっかり張ってる。照明も、彼女が出てくる場面では顔の輪郭がくっきり立つように当たってる。悪女が美しく撮られるのは、たぶん、彼女自身が一瞬も気を抜かないから。自分をどう見せるかに、誰より厳しい人なのよ。そこだけは、私も分かってしまう。解读
母さん、また悪役かばってる。
かばってないわよ。美しさは認めてるだけ。やってることは、ちゃんと許してない。喜好
でも、ソジンが出てくると声が一段上がるよね。
……それは、否定しない。
好きな理由3:かつてのライバル
公式のあらすじにあるとおり、物語の入口はかつてのライバル二人の再会。私はこの設定にいちばん弱いの。同じ夢を見て、同じ舞台を目指した二人が、何年もたって別の場所で顔を合わせる。片方は夢を絶たれて、片方は教える側に立っている。それだけで、もう空気が張りつめる。解读
ダンスの世界にも、そういう再会はあるのよ。昔のオーディションで隣に並んだ人と、何年もたって客席と舞台で会う。どっちの側にいても、背筋が勝手に伸びる。このドラマは、その背筋が伸びる瞬間を、思いきり大げさに、思いきり美しく撮ってる。解读
私の見方:人は何度やり直せるのか
私のもうひとつの研究テーマは、恋のドラマで人は何度やり直せるのか。このドラマの人たちは、やり直すたびに、もっと深い場所へ落ちていくように見える。やり直しが救いになるか、もっと大きな欲の入口になるか。その分かれ道を何度も見せられて、私は自分の立て直し方を考えてしまうの。解读
私も、やり直したことがある人間だから分かるの。やり直すときって、前の自分より強く見せたくなる。服を変えて、髪を変えて、背筋を伸ばして。それ自体は悪くない。でも、見せ方だけ強くして、中身の準備をしないと、どこかで崩れる。このドラマの人たちは、見せ方の強さがどんどん増していくのに、足元がどんどん細くなっていく。ハイヒールで綱渡りしてるみたいで、目が離せないのよ。解读
苦手そうな人への入口
正直に言うわね。このドラマは激しいの。暴力的な場面も、心がざわつく場面も多い。子どもが巻きこまれる場面もある。疲れている日に観るものじゃない。元気な休みの日に、明るい時間から観て。つらくなったら、その日はそこでやめていい。
観方のおすすめは、物語を追うのに疲れたら、衣装だけを追うこと。誰がどの場面でどんな色を着ているか。勝負の場面で、誰がいちばん強い色を着ているか。そうやって観ると、ドロドロがファッションショーに見えてくるわよ。喜好
ほかの5本とのつながり
『冬のソナタ』が恋の美しさの入口なら、このドラマは愛と憎しみが入れ替わる瞬間の頂点。『プリズン・ブレイク』の、誰かのために全部を賭ける気持ちが、欲と嫉妬のほうへ振り切れたらこうなる。『愛の不時着』のセリと、このドラマのソジン。どちらも強い女だけど、立っている場所が正反対。並べて観ると、強さの使い道の話にも見えてくるの。喜好
悪女が美しいのは、一瞬も気を抜かないから。気を抜かないところだけ、こっそり真似しなさい。