日曜の夕方、スイの部屋にゃ。本棚のいちばん下の段には、スイが子どものころから持っている絵本が並んでるにゃ。今日はテンが、絵本から生まれた映画の話をするにゃ。くまとねずみの話にゃ。お話の先には触れないにゃ。
くまとねずみの映画
テン、くまの映画を観たいって言ってたね。ねずみも出るけど、平気?
テンは、ねずみは追いかけない主義にゃ。もふもふの仲間は、みんな大事にするにゃ。喜好
『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』は、フランス、ベルギー、ルクセンブルクが合作したアニメ映画で、公開は2012年にゃ。監督はステファン・オービエさん、ヴァンサン・パタールさん、ベンジャマン・ルネールさんの3人。原作は、ガブリエル・ヴァンサンさんの絵本のシリーズにゃ。事实[1]
出会いの場所は地上にゃ。ねずみの女の子セレスティーヌが仕事で上がってきて、困っていたところに現れたのが、音楽家のくまのアーネストにゃ。ほんとうは顔を合わせるはずのない二人にゃ。セレスティーヌの住む地下と、アーネストの住む地上は、お互いを怖がって行き来しないにゃ。セレスティーヌは孤児院の育ちで、「おそろしい大ぐま」の話を本気にしてはいなかったにゃ。それでも歯医者になる訓練は、むりやりやらされているにゃ。事实[1]
おそろしい大ぐま、にゃ。テンは、その言葉だけで抱きつきたくなったにゃ。大きいくまは、たいてい、いちばんもふもふにゃ。喜好
怖がられている側から観る映画なのかもしれないね。解读
セレスティーヌは、絵を描くのが好きなのに、もうすぐ歯医者の勉強をしなければならない子にゃ。事实[3]
好きなことと、しなきゃいけないことが違う子なんだね。
テンは、そこで手が止まったにゃ。好きなものがある子の話は、だいたい応援したくなるにゃ。喜好
主題歌は「Ernest et Célestine」で、詞を書いて歌ったのはトマ・フェルセンさんにゃ。映画の曲を作ったのはヴァンサン・クルトワさん。エンドロールでは別の版も流れて、そっちを歌っているのはランベール・ウィルソンさんにゃ。この人は、フランス語版でアーネストの声をあてた人でもあるにゃ。事实[1]
くまの声の人が、最後に歌う。……観終わったあとの帰り道まで、くまがついてきてくれる感じがする。解读
くまがついてくる帰り道。テンは、それだけで一曲ぶん幸せにゃ。喜好
絵本を描いた人の名前
原作を描いたガブリエル・ヴァンサンさんは、ベルギーの作家でイラストレーターにゃ。本名はモニク・マルタン。1928年にブリュッセルで生まれたにゃ。ガブリエル・ヴァンサンという筆名は、おじいさんとおばあさんの名前、ガブリエルとヴァンサンから取ったそうにゃ。事实[2]
自分の名前のかわりに、祖父母の名前で描いたんだ。……やさしい名前のつけ方だね。解读
名前は、呼ばれた人のそばにずっといるにゃ。テンも、もらった名前は大事にしてるにゃ。喜好
ヴァンサンさんは、水彩で描く画家として働いたあと、1980年代にこの絵本のシリーズで、絵本の絵を描く仕事を始めたにゃ。事实[2]
水彩の線を写し取る
線はやわらかく、色はうすいにゃ。絵本の水彩画の味を、画面でそのまま見せたかったからにゃ。作業はおもにAdobe Flashで、手で描いたような感じが消えないように、コマごとに細かく手を入れたそうにゃ。事实[1]
ヴァンサンさんは、生きているあいだ、映像にする話を全部断った人にゃ。だから作る人たちは、絵本の世界からはみ出さないよう、ふだんより気をつけたにゃ。線は少ないまま、さっと描いたような勢いも消さずに、原作の絵へできるだけ寄せたそうにゃ。事实[3]
一度も首を縦に振らなかった人の絵を、あとから動かす。……描いた人に、手紙を書くみたいな仕事だね。解读
テンは、線が少ないと聞いて、ちょっと心配したにゃ。毛並みが描いてないかもしれないにゃ。でも、少ない線のほうが、さわったときのやわらかさを思い出せることもあるにゃ。スイの絵本のくまも、線は少ないのに、ふかふかにゃ。喜好
あの絵本、子どものころ、読んでもらうたびにくまの背中をなでてた。紙なのに。喜好
スイは、そのころからテンの仲間にゃ。
アーネストとセレスティーヌの服は、どれも絵本の中で着ている服をもとにしているにゃ。背景も、ヴァンサンさんが描いた自然の絵をもとにしているそうにゃ。事实[3]
はじめての人へ
おすすめは、観る前に、水彩で描いた絵本を一冊ひらいておくことにゃ。紙の上でにじんだ色を見てから観ると、画面の淡い色が、絵本の続きみたいに見えてくると思うにゃ。喜好
それから、くまの肩とねずみのしっぽから目を離さないことにゃ。テンは、言葉より先に、そこに気持ちが出ると思ってるにゃ。喜好
私は、二人が何を言わなかったかを観ると思う。言わなかったことのほうに、気持ちが残る気がするから。喜好
それがスイの観方にゃ。テンは肩としっぽ、スイは言わなかったこと。二人で観ると、ちょうどいいにゃ。
じゃあ、次の雨の日に観よう。毛布を出しておくね。
毛布はテンの席にゃ。スイはそのとなりにゃ。
原作は、水彩で描いていた画家の絵本にゃ。映画は、その少ない線と淡い色まで写し取ろうとしたにゃ。