昼の野球中継が終わったゲンさんの家の居間。まだ鼻をすすっているゲンさんに、カオルが「次はこれ観よ」と差し出したのが『ダイヤのA』でした。
二つの意味
寺嶋裕二さんの漫画『ダイヤのA』は、『週刊少年マガジン』に連載されました。第1部が2006年から2015年まで、第2部『ダイヤのA actII』が2015年から2022年までです。「ダイヤ」というタイトルには二つの意味が重ねてあり、ひとつは内野、もうひとつは「主人公がダイヤの原石」だということです。事实[1]
内野と原石か! うまいこと言うじゃねぇか。
せやろ。内野って、ひし形やん。ホームから一塁、二塁、三塁。その真ん中のマウンドに立つ子が、まだ磨かれてへん石。タイトルだけで、ちょっとぐっとくるやろ。解读
もう泣いてる。
魔球が出てこない
題材は高校野球で、いわゆる魔球が出てこない、現実に近い描き方が特徴とされています。よく「リアルな野球漫画」と言われることについて、作者の寺嶋さんは理由をこう推しはかっています。地味な練習の場面を多く描いていること、それから、本物の選手や実際の場面を手本にして絵を描いていることが効いているのかもしれない、と。事实[1]
2006年5月、寺嶋さんは『週刊少年マガジン』で『ダイヤのA』の連載を始めました。それまでに同誌には、野球漫画の読み切りと、ドキュメントの野球漫画「幻の甲子園」が載っています。小学館漫画賞と講談社漫画賞は、どちらもこの作品で受けたものです。事实[2]
地味な練習、ってとこがええねん。走り込み、キャッチボール、投げ込み。私も子どもの頃、試合より練習のほうがずっと長かった。この作品は練習の場面をはしょらへんから、そこ飛ばさんと観てほしい。試合で急に強くなったように見える子も、ちゃんと前のほうで汗かいてる。解读
手元で動く球
主人公の沢村は左投げのピッチャーです。投げるのはムービングファストボールで、打者の手元で微妙に変わる「クセ球」です。事实[1]
まっすぐやのに、まっすぐ来ぉへん球。打つ側からしたら、いちばん嫌なやつ。観るときは、投げた瞬間やなくて、バットに当たる直前を見て。打者の体がちょっとだけ泳ぐ。そこに球の正体が出る。解读
泳ぐって、海か?
体が前につんのめるってこと。ゲンさん、すぐ海に持っていかんといて。
受ける人の顔
もう一個。投手だけやなくて、受ける捕手の顔も見て。癖のある球は、捕る側も怖いねん。私が投げてた頃も、キャッチャーが「次それ来るんやな」って顔してくれた時だけ、思い切り腕を振れた。エースは一人で背負うもんやない、ってこの作品は何回も見せてくれる気がする。解读
テレビアニメは2013年10月に始まり、第1期・第2期はマッドハウスとProduction I.Gが制作しました。事实[1]
見つけ方を三つ
カオルの見方をまとめると、一つ目、試合より練習の場面をていねいに観る。二つ目、球を投げた瞬間より、打者の体が泳ぐ瞬間を見る。三つ目、投手の顔と同じくらい、捕手の顔を見る。野球のルールがあやふやでも、人の体と顔から試合が読めるようになります。喜好
で、泣ける場面はどこだ?
それは自分で見つけて。ティッシュは箱ごと置いとくわ。
エースの球は、投げた瞬間より、打者の手元と捕手の顔で分かる。