夕方、庭の花に水をやっていたタカシさんが、自転車を押して帰ってきたハヤテに声をかけました。「最近は自転車ですか」。ハヤテは少し照れて、「漫画の影響です」と答えました。
タイトルは作者の乗り方
渡辺航さんの『弱虫ペダル』は、ロードレースを中心に自転車競技を描いた、本格派のスポーツ漫画です。連載の場は『週刊少年チャンピオン』で、2008年12号から続いています。タイトルのもとになったのは、渡辺さん自身の乗り方。軽いギアで回転数を上げ、ペダルをくるくる回して走るスタイルを、渡辺さんは勝手に「弱虫ペダル」と呼んでいて、それを題名にしました。事实[1]
弱虫、ですか。強そうな名前ではありませんね。
はい。でも、軽いギアで回すのは、弱いからじゃないんです。重いギアを力で踏むと、脚がすぐに疲れてしまう。軽いギアでたくさん回すと、長く走れる。カートでも、タイヤを使い切らない走り方のほうが、最後に速いんです。それで、コーナーの手前で……いえ、この話は長くなるので、また今度。解读
ママチャリで秋葉原へ
主人公の小野田坂道は高校1年生で、アニメや漫画、そして秋葉原が大好きです。小学4年生のときから、片道で45km以上ある秋葉原まで、自転車で通いつづけてきました。電車賃を浮かせて、そのぶんグッズを買うためです。乗っていたのは重たいママチャリ。しかもギア比を低くしてあって、いくら漕いでも距離が稼げないよう細工されていました。事实[1]
重い車体で、軽いギアで、遠くまで。本人の知らないうちに、ものすごい回転の練習をしていたことになります。毎日の積み重ねが速さになる話は、僕、弱いんです。解读
好きなもののために続けていたことが、思いがけない場所で力になる。……また、歴史のたとえを出しそうになりました。今日はやめておきます。
激坂を歌いながら
同級生の今泉は、中学のころ自転車競技で活躍していました。その今泉の目に「信じがたい光景」と映ったのが、学校裏の斜度20%以上ある激坂を、坂道が歌いながらママチャリで登っていく姿です。事实[1]
歌いながら登れるのは、息に余裕があるからです。坂の場面では、顔より、口元と肩を見てください。苦しいと肩が上がって、口が大きく開く。うまく回せている人は、肩が下がったままです。解读
アニメは音で聴く
テレビアニメを制作したのはトムス・エンタテインメントで、監督は鍋島修さん。2013年10月に第1期の放送が始まりました。事实[2]
アニメでは、音にも耳を向けてみてください。回転が上がると、音の間隔も詰まっていく気がするんです。目を閉じて音だけ聴くと、誰がどのくらい回しているか、分かる気がするんです。僕はいつも、そこで一回目を閉じます。喜好
道の上では
一つだけ。レースの走り方は、レースの場所でのことです。僕はふだんの道では、信号も一時停止も守って、ゆっくり走ります。道は、みんなのものですから。喜好
自分で決めた約束を守っている、ということですね。私も見習います。
見つけ方を三つ
ハヤテの見方をまとめると、一つ目、脚の回る速さを見る(重いギアを踏んでいるのか、軽いギアで回しているのか)。二つ目、坂の場面では、口元と肩を見る。三つ目、アニメでは目を閉じて、ペダルとチェーンの音の間隔を聴く。自転車に乗らない人でも、体の使い方から走りが読めるようになります。喜好
軽いギアでくるくる回すのは、弱いからじゃない。長く遠くまで走るための、いちばんていねいな漕ぎ方です。