アニメ映画『ヒックとドラゴン』(2010年)を最後まで観た人のための、二周目の案内です。まだ観ていない人は、ここで戻ってください。初めて空を飛ぶ場面の驚きは、一回目にしかありません。展開に触れるところは、押さないと開かない箱に入れました。箱の外では、物語の行方は書きません。
空を飛ぶ場面だけを観ていた
一周目は、空を飛ぶ場面で息を止めていました。雲の中を抜けて、海面すれすれを走る。パイロットになりたい僕には、それだけで十分でした。二周目を観たのは、エマさんに「あの映画、作り手がジブリ好きなんだよ」と教えてもらってからです。喜好
『ヒックとドラゴン』は、アメリカで2010年に作られた3Dアニメーション映画です。監督を務めたのはディーン・デュボアさんとクリス・サンダースさんで、上映時間は98分。事实[1]
監督の二人は宮崎駿さんとスタジオジブリの作品が好きで、空を飛ぶ場面を作るときには『紅の豚』や『魔女の宅急便』から影響を受けたそうです。事实[2]
ほら、ハヤテくんの6選とつながるでしょ。空の撮り方、見比べると楽しいよ。喜好
はい。でも二周目は、空より先に地上を観てしまいました。
鍛冶場の作業台
ヒックは幼いころからゲップの鍛冶屋で修業してきて、ものを作る腕には確かなものがあります。そのゲップは、ドラゴンと戦って左腕と右脚を失い、いまは義肢をつけています。義手は、いろいろな道具に付け替えられるようになっています。事实[3]
一周目の僕は、鍛冶場を「主人公が冴えない毎日を送る場所」として観ていました。二周目は、物語に必要な道具が、全部この作業台の上で生まれていることに気づきます。ゲップの付け替えられる義手は、最初からずっと画面にある。直す人と、直されたものが、冒頭から同じ部屋にいるんです。二周目は、鍛冶場の壁に何が掛かっているかを観てみてください。解读
撃ち落とされた尾の先
物語の冒頭、ヒックは自作の投擲機で、いちばん危険なドラゴンとされるナイト・フューリーを捕まえます。事实[4]
ナイト・フューリーは、ヒックに撃ち落とされたときに、尾の先についた小さな翼を片方なくしてしまいます。もう一度空へ戻れるように、ヒックはそのドラゴンと飛ぶ練習を繰り返していきます。事实[4]
二周目にここで気づくのは、撃ち落とした手と、直す手が、同じ人の手だということです。最初の発明は相手を落とすための道具で、次の発明は相手を飛ばすための道具。作業台の上で、同じ腕の向きが逆になる。一周目の僕は、その折り返しに気づかずに観ていました。解读
サウンドトラックの曲名にも、その順番が出ています。「New Tail(新しい尾ビレ)」の二曲あとに「Test Drive(テスト飛行)」が来る。事实[5]
ここからが、僕がいちばん好きなところです。作って、付けて、試して、また直す。一周目は、うまくいかない場面を笑いながら流していました。二周目は、試すたびに何が変わっているかを追ってください。……あ、すみません。テスト飛行の話になると止まらなくなります。カートでも、新しい部品を付けた最初の一周は、いちばん緊張して、いちばん楽しいんです。解读
わかる。絵を描くときも、下描きを何回も直すところがいちばん楽しい。完成より途中が好き。喜好
乗り手と機体は一人では飛べない
二周目に気づいたのは、尾ビレを失ったドラゴンが一頭だけでは飛べず、ヒックも一人では飛べない、という組み立てです。空を飛ぶには、乗り手とドラゴンが同じタイミングで動かないといけない。僕はこれを、乗り手と機械がひとつになる話として観ました。ドラゴンを機械と呼ぶのは失礼かもしれませんが、整備する人の目で観ると、そう見えてしまうんです。解读
中段为止中盤の展開(訓練の場面まで)点击展开
ドラゴンと一緒に過ごすなかで覚えた習性を、ヒックは村のドラゴン訓練に持ちこんで、うまく切り抜けていきます。急に成績が伸びた彼に、周りの目が集まりはじめる。一周目の僕は、ここを「秘密がばれるかどうか」のはらはらとして観ていました。
二周目は、訓練の場面と、森の入り江の場面を交互に観る構成に目が行きます。入り江で整備と試験飛行をして、訓練場でその成果を出す。ピットとコースを往復しているみたいです。そして、アスティがトゥースに乗せてもらい、空へ上がる場面。一周目はきれいな飛行の場面として観ましたが、二周目は、乗り手以外の人を初めて乗せる、試験の場面に見えました。自分の整備を、他の人に信じてもらう瞬間です。
撮り方は自然光
ロジャー・ディーキンスさんが撮影アドバイザーとして加わっていて、自然の光を意識した撮り方は、彼の助言から生まれたものです。事实[6]
ここ、私が二周目でいちばん観てほしいところ。雲の中の光、朝の光、炎の光。光の向きが変わると、同じ空でも気持ちが変わるの。解读
空を飛ぶ人にとって、光は景色じゃなくて情報です。雲の高さも、風も、光で読みます。エマさんに言われて、二周目は光の向きで場面を観直しました。解读
最後の場面
二周目でいちばん長く止めたのは、最後の場面です。何が映っているかは、畳んだ中で書きます。喜好
结局·真相結末点击展开
最後の戦いのあと、目を覚ましたヒックは、片足の先を失っていて、義足をつけています。尾の片方を失ったドラゴンと、足の先を失った少年。どちらの欠けたところも、鍛冶場の手で補われている。
二周目に冒頭のゲップの義手と義足を覚えていると、この結末の見え方がまったく変わります。この村では、失ったものを道具で補って、また前に出るのが当たり前のことだった。ヒックが目覚めたとき、それは終わりではなく、整備が一つ増えただけなのだと僕は受け取りました。
そして最後に、二人はまた一緒に空へ出ます。僕には、ヒックの義足とドラゴンの人工の尾ビレが、同じ一つの仕組みとして働いているように見えました。乗り手と機体が、お互いの欠けたところを預け合っている。一周目は涙で見えなかった足元を、二周目はちゃんと観てほしいです。
……うん。最後、二周目のほうが泣いた。喜好
機械が賢くなっても
僕はときどき、機械が自分で運転する時代に、自分の腕に意味はあるのかと考えます。この映画を二周目に観て、少しだけ答えに近づいた気がしました。どんなに賢い体を持っていても、乗る人と整える人がいて、はじめて空に出られる。速く飛ぶことより、直しながら飛び続けることのほうが、この映画では大事にされています。解读
二周目は、冒頭の鍛冶場の壁と、ゲップの付け替えられる手を覚えてから観てください。最後の場面が、違って見えます。