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動畫·漫畫小知識

振り返る歌と立ち止まる歌

1974年に出た歌を28歳のナギが鍋をかき混ぜながら歌い、2013年のアニメの歌を52歳のタカシが帰りの車で一度だけ聴く。昭和の歌と2010年代の歌を、歌詞を引かずに読み比べたら、年齢と歌の向きがあべこべだった。

適合這樣的人
昔の歌と最近の歌、どちらか片方ばかり聴いている人へ。年の離れた誰かの十八番を、一度ちゃんと聞いてみたくなるかもしれません。
劇透範圍
無劇透 『魔女の宅急便』『凪のあすから』の舞台設定と、主題歌の成り立ちまで。物語の展開と結末には触れません
發言的人
Takashi × Nagi
主張的種類: 事實 作品中的觀察 有依據的推測 解讀 喜好
目錄 共 6 節·約 5 分鐘
  1. 映画より十五年早く生まれた歌
  2. 大人が子どものころを振り返る
  3. 分析しないと決めている歌
  4. まだ振り返れない場所から
  5. 題名の続きが空いている
  6. 交換して聴いてみる

日曜の午後、喫茶店の窓ぎわで、ナギとタカシが互いの「よく口ずさむ歌」を見せ合いました。ナギは『魔女の宅急便』の「やさしさに包まれたなら」、タカシは『凪のあすから』の「lull〜そして僕らは〜」。歌詞は書き写さず、二人の言葉で中身を話しています。作品の展開には触れません。

映画より十五年早く生まれた歌

Nagi

私の歌から聞いてもらっていいですか。『魔女の宅急便』のエンディングに流れる「やさしさに包まれたなら」です。荒井由実さんが作詞も作曲もして、歌っているのも荒井由実さん。事實[1]

Takashi

映画のために作られた曲だと、私はずっと思っていました。

Nagi

私も子どものころはそう思ってたんです。でも、何度も観たこの映画の主題歌って、もとからあった曲なんですって。しかも映画に流れたのは、セカンドアルバム『MISSLIM』に入っているほうのアレンジ。シングルとアルバムとでは、アレンジが違うらしくて。事實[2]

映画は1989年公開

Nagi

シングルが出たのは、タカシさんが生まれた年の春なんです。それで、そのシングルのB面の曲名が「魔法の鏡」なんです。事實[3]

シングルは1974年4月20日発売

Takashi

……十五年後に魔女の映画で使われる曲の裏に、魔法の鏡ですか。偶然でしょうが、出来すぎていますね。喜好

大人が子どものころを振り返る

Nagi

中身を大づかみに言うと、大人が子どものころの不思議な気持ちを振り返って、いまでもそれはなくなっていない、と確かめる歌だと思うんです。解讀

Nagi

サビでは視点が自分の外へ、まわりの世界へ開いていく感じがします。私はそこで、パン屋さんの台所の場面を思い出します。解讀

Takashi

つまり、大人が子どものころを振り返って、それでもまだ大丈夫だと言う歌、ということですか。解讀

Nagi

そうだと思います。だから映画の最後に流れると、ひとり立ちしたばかりのキキに、少し先の大人が声をかけてるみたいに聞こえて。私、これを鍋をかき混ぜながら歌うんですけど、うまく歌うより、ちょっと気がゆるむ歌なんです。喜好

分析しないと決めている歌

Nagi

タカシさんの「lull」は、どんな歌なんですか?

Takashi

先に申し上げておくと、私はこの曲を分析しないことにしています。若い人たちの話を観て静かに泣いたあと、帰りの車で一度だけ聴く。それだけの曲です。喜好

Takashi

ですから、事実だけ。『凪のあすから』の第1話から第13話までのオープニングで、作詞は川田まみさん、作曲は中沢伴行さん、歌はRayさんです。事實[4]

オリジナルのテレビアニメ『凪のあすから』は、放送が2013年10月に始まって、2014年4月まで続いた。かつて人は海の中で暮らしていたが、いまは海と陸に分かれて住んでいる。そんな世界で、7人の少年少女の心が揺れ動くさまを描いている。事實[5]

Nagi

じゃあ、私が調べてきたことを言いますね。録音のとき、Rayさんがなるべく映そうとしたのは光のもどかしい気持ち。歌詞も、主人公の先島光から見た形で書かれている、と紹介されてます。事實[6]

Takashi

……もどかしい。そうですね。その言葉なら、分析しなくても分かります。喜好

まだ振り返れない場所から

Nagi

私が歌詞カードを読んで受け取ったのは、変わっていく毎日の真ん中にいて、言いたいことがうまく言葉にならない男の子の声、という感じでした。細かいところは、私もまだ聴き取りきれてないんですけど。解讀

Nagi

それで気づいたんです。ユーミンの歌は、大人が子どものころを振り返る歌。lullは、子どもが振り返る余裕もないまま、いまに立ち止まってる歌。向きが反対なんですよ。解讀

Takashi

なるほど。……そして、振り返る歌を若いナギさんが歌って、立ち止まる歌を、私のような年の者が聴いている。解讀

Nagi

あ、ほんとだ。あべこべですね。

Takashi

私には、振り返る歌はまだ少し痛いのかもしれません。振り返ると、何を先に守るべきだったか、を思い出してしまうので。若い人のもどかしさを聴いているほうが、まだ……いや、失礼しました。喜好

題名の続きが空いている

Nagi

題名の「そして僕らは」で止まってるの、ずっと気になってたんです。僕らは、どうなるの?って。解讀

Takashi

題名を言い切らずに終える、ですか。歴史の書き物でも、話の続きを読み手に預けるような……いえ、歌の話でした。

Nagi

ふふ。でも、題名の続きを言わないのは、答えを観る人に預けてる感じがします。凪って、風が止んで海が静かになる時間ですよね。止まってるけど、終わってはいない。解讀

Takashi

放送の後半には、同じ川田まみさんの作詞で「ebb and flow」という別のオープニングがあるそうです。私はそれを知って、題名の続きは、物語のほうで書かれていくのだと思うことにしました。解讀[7]

Nagi

どんな続きになるかは、観る人だけのお楽しみ、ですね。

交換して聴いてみる

Nagi

今日の帰り、私はlullを一回だけ聴いてみます。分析はしないで。喜好

Takashi

では私は、やさしさに……を、一度だけ。振り返る歌が痛いかどうか、確かめてみます。喜好

歌には向きがある。振り返る歌か、いまに立ち止まる歌か。自分の十八番がどちらを向いているか、一度だけ確かめてみる。

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