週末の昼、ルカーノの工房。ルカーノは生地の買い出しに出ていて、作業台にはカノンの新しい舞台衣装の型紙が広げてありました。レイは待ち針を針山に戻し、ミシンの手を止めました。
王子様になりたい少女
レイさん、ウテナって何ですか! 王子様みたいな衣装がいいって言ったら、それならウテナを観てって言われて。
待って。説明する。……短くする。
制作はJ.C.STAFF。『少女革命ウテナ』のテレビシリーズは、テレビ東京系列で1997年の4月2日に始まり、同じ年の12月24日に終わりました。話数は全39話です。事實[1]
天上ウテナは、幼いころに出会った王子様にあこがれ、自分もああなりたいと思っている少女です。入学した鳳学園では、「薔薇の花嫁」と呼ばれる姫宮アンシーと出会い、決闘のゲームに巻き込まれていきます。事實[1]
王子様に助けられた子が、自分も王子様になりたい! わかります! 私も、小さな舞台を見て、自分も立ちたくなったので!喜好
それ。憧れた人のそばに行くんじゃなくて、憧れた人の立ち位置のほうを、自分で着る。私はそういう憧れ方が好き。解讀
原作はビーパパス
『美少女戦士セーラームーン』の中心スタッフだった幾原邦彦さんが作ったチームがビーパパス(Bepapas)で、名前は「大人になろう」という意味です。事實[1]
さいとうさんの漫画は放送より先に出ましたが、原作と記されているのはビーパパスのほうです。事實[1]
さいとうさんは、宝塚歌劇団に入りたいと考えたことがあるほどの宝塚ファンです。1997年のテレビアニメ『少女革命ウテナ』では幾原監督とともに制作に関わり、1999年の映画版にも加わりました。コミックスは、どちらについても担当しています。事實[2]
えっ、漫画のほうが先に出てるのに、原作じゃないんですか?
そう。出た順番と、どっちが元かは別。そこまでは公式に書いてある。ここから私の解釈。漫画とアニメは親子じゃなくて、同じ企画から並んで出てきた二人。どっちかがどっちかに従う関係じゃない。並び方として、私はかなり好き。解讀
あと、セーラームーンのメインスタッフだった人の作品って知ったとき、手が止まった。私、セーラームーンは仲間の並び方だけで何時間も話せるから。喜好
大人になろう、で、ビーパパス……。ビーパパス……ビーパパス……。私も大人になれるよう、がんばります!
……今の、何?
えっと……気合いの呪文です!
書き割りと影絵の少女
影絵の少女たちが演じる劇中劇に、書き割りのような背景、そして男装の麗人。宝塚歌劇と前衛劇のあいだに立つような画面です。影絵の少女を考えたのは、シリーズ構成の榎戸洋司さんでした。事實[1]
アーチの向こうには建物を置かず、真っ白な空だけ。美術監督の小林七郎さんは、幾原監督からそんな指示を受けたといいます。事實[1]
書き割りって、舞台の後ろの大きな絵ですよね! ライブハウスにはないけど、劇場で見たことあります!
そう。背景が書き割りみたいだと、私は、人と人の並び方のほうに目が行く。誰の隣に誰がいて、どこが空いてるか。解讀
アーチの向こうを白い空にする話も好き。衣装でも同じ。全部を飾らないで、空けておく場所を作ると、着た人が立つ。解讀
空けておく場所……! ルカーノさんにいつも言われる、引き算ですね!解讀
それ。……今の、長かった?
まだ型紙、半分です!
一話目は学園の形から
鳳学園の敷地は前方後円墳の形で、第1話の全景の場面で確かめられます。事實[1]
前方後円墳! 教科書で見たやつ!
一話目で、全景が出たら確かめて。形があることまでは事実。その形を見て何を思うかは、観た人の数だけあっていい。解讀
観るときは、話の筋より先に、人がどこに立ってるかを見て。私は一話目を、立ち位置だけ追いかけて三回観た。喜好
立ち位置なら任せてください! 舞台で一番最初に覚えるのが、それなので!喜好
じゃあ、衣装の続き。肩の線、もう少しだけ張る。
『少女革命ウテナ』のさいとうちほさんの漫画は、放送より先に世に出たが、原作ではない。原作は、幾原邦彦さんが作ったチーム「ビーパパス」。名前に込められた意味は「大人になろう」。