美術館の矢印どおりに歩くのが、ナギはちょっと苦手です。好きな絵の前に長くいたいし、疲れたら座りたい。そんな話をしていたら、イロハが三鷹の森ジブリ美術館の「館主のことば」を見せてくれました。
矢印どおりに歩かなくていい美術館が、本当にあるんですか? ふるさとの王宮の宝物庫は、決まった順番でしか歩かせてもらえません。
「こんな美術館にしたい」
館主のことばの書き出しは「こんな美術館にしたい」です。そこには、楽しみたい人も、考えたい人も、感じたい人も、それぞれにそうできる美術館であってほしいという願いが並びます。入ったときより出るときのほうが、少し心が豊かになってしまう美術館、という言葉もあります。事實[1]
楽しみたい人は楽しめる、って書いてあるの、うれしい。考えなきゃいけない場所じゃないんだ。喜好
順路で管理したくない
運営の項目を見ると、小さな子どもたちも一人前として扱いたい、スタッフが自信と誇りを持って働ける場にしたい、という言葉に続いて、お客さんを道順や順路であまり管理したくない、という一行が置かれています。事實[2]
これこれ。私みたいに、気に入った場所でずっと立ち止まりたい人にとっては、すごくありがたい。喜好
建物のことも書いてある。建物そのものが一本の映画になるようにつくりたい。威張った建物にも、豪華そうな建物にも、密封された建物にもしたくない、って。順路で管理したくないっていうのも、映画のなかを自分の足で歩き回ってほしい、ということなのかも。有依據的推測[3]
私は、決められた順番がないと、光の入り方や足音の響きみたいな、小さなものに気づきやすくなる気がする。解讀
建物が一本の映画……。魔法使いの幻術の館みたいに、入ると物語の中にいる、ということですか?
近いけど、そこが違うの。幻術の館は見せたいものを順番に見せてくれるでしょう。ここは順路がないから、何に目をとめるかを、歩く人が選べるの。解讀
「おもいで美術館」にはしない
展示物についての項目には、ジブリのファンだけが喜ぶ場所にはしたくない、と書かれています。これまでの作品の絵を並べただけの「おもいで美術館」にもしたくない。美術館ならではの作品や絵を描いて発表し、オリジナルの短編もつくって公開したい、という願いも添えられています。事實[4]
その願いを形にしたのが、映像展示室「土星座」(地下1階)です。入れるのは80人ほどという小さな映画館で、土星座のためにスタジオジブリがつくったオリジナルの短編アニメーションと、美術館おすすめのアニメーション作品がかかっています。事實[5]
「くじらとり」も上映作品のひとつで、上映時間は約16分。作品紹介によると、原作は中川李枝子さく・大村百合子えの「いやいやえん」で、脚本と監督は宮﨑駿です。事實[6]
16分なら、疲れていても観られる。美術館の中で、短い映画を一本だけ観て帰るの、すごくぜいたく。喜好
ここでしか観られない物語……。旅の吟遊詩人が、その村でだけ歌う歌みたいですね。
カフェも大事な場所
カフェについての項目も、館主のことばにはあります。楽しんだりくつろいだりするための大切な場所にしたい。けれど、安直にはやりたくない、という書き方です。事實[7]
休むところまで、ちゃんと考えてくれてるんだ。観るのと同じくらい、休むのも大事って言われてるみたいで、ほっとする。解讀
観終わったあとにお茶を飲む時間まで、一本の映画の続きなのかもしれないね。解讀
休むところまで大事にしてくれる美術館……。シオル、カフェでひと休みしてから、もう一回まわりたいです。
ジブリ美術館の「館主のことば」には、順路でお客さんを管理したくない、と書いてある。地下には美術館のためだけの短編を上映する小さな映画館もある。