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6選の最後は『ARIA The ANIMATION』です。先に白状しておきますね。私はこの作品の内容を、ほとんど覚えていません。それでも、いちばんよく観ている作品なんです。
夜十時の洗濯物
子どもたちが寝て、台所を片づけ終わるのが、だいたい夜の十時ごろ。そこから、居間に山盛りの洗濯物を広げます。七人分ですから、タオルだけでもひと山。それを畳みながら、テレビでやさしいアニメを流すのが、私の一日の最後の時間です。いろいろ流してきましたけれど、気づくといちばん多くかけているのが、この作品でした。畳み終わったタオルの山が少しずつ高くなっていくのを見るのも、ひそかな楽しみです。喜好
舞台は観光都市ネオ・ヴェネツィア。公式サイトのストーリーのページによれば、そこは水の星「アクア」にあり、その星は惑星を改造して生まれ変わったのだそうです。事实[1]
主人公の水無灯里は、15歳の少女。マンホーム(地球)からやってきたのは、ウンディーネ(水先案内人)を夢みていたからです。公式サイトの紹介によれば、そんな彼女を中心に、やさしくて少しだけ切ない物語が広がっていきます。事实[1]
覚えていないのに好きな理由
何話を観たのか、誰が何をしたのか。翌朝にはもう、ほとんど思い出せません。同じ回を、何度も初めてのような気持ちで観ていると思います。家族には笑われますけれど、私はそれで十分楽しいんです。覚えていないのに、観終わったあとには、いつも肩の力が抜けている。この作品が残してくれるのは、話の筋より、その感じなのだと思います。喜好
好きな理由1:誰も声を荒らげない
私の覚えている限り、この作品の中では、誰かが怒鳴ったり、意地悪をしたりする場面がほとんどありません。乱暴な場面になるとテレビを消してしまう私でも、安心して流しておけます。洗濯物を畳む手を止めずにすむ。それがどれだけありがたいか、夜の居間にいる方なら分かっていただけると思います。喜好
好きな理由2:水の街の速さ
舟がゆっくり水の上を進む。その速さが、洗濯物を畳む手の速さと、ちょうど同じなんです。タオルを一枚畳むあいだに、画面の舟が角をひとつ曲がる。急がなくていい速さで物語が流れていくので、疲れた頭にも負担がありません。昼間は七人分の食事で走り回っている私にとって、一日の最後に、この速さに合わせることが大事なのだと思います。解读
好きな理由3:小さなことを喜ぶ人
主人公は、小さなことをとても喜ぶ人です。空の色や、街の景色や、誰かとのちょっとしたやりとり。私は内容を覚えていないのに、その喜び方だけはなぜか覚えています。家事は、毎日同じことのくり返しです。でも、今日の洗濯物がよく乾いた、というだけで少しうれしくなれたら、それで一日がまるくおさまる。この作品から、そういう目を分けてもらっている気がします。解读
そういえば、たしか猫も出てきたような気がします。ふくふくした、のんびりした猫。縁側に来るテンちゃんを思い出して、つい手が止まりました。喜好
……にゃ。
あら、テンちゃん。今夜はこっちまで上がってきたのね。洗濯物の上で寝てはいけませんよ。
料理の場面だけは手を止める
流し見をしている私でも、手を止める場面があります。誰かが何かを食べたり、飲んだりしている場面です。この作品でも、誰かと一緒に温かいものを口にする時間が、ふっと挟まることがあったように思います。何を食べていたのかまでは覚えていないのに、その場の空気がやわらかかったことだけは覚えている。台所番の目は、どうしてもそういうところに吸い寄せられてしまうんです。喜好
流し見でいいと思えたこと
以前は、きちんと観ていないのに好きだと言うのは、作品に失礼なのではないかと思っていました。でも、疲れた夜にそばにあって、肩の力を抜いてくれる。それも作品とのひとつのつきあい方なのだと、この作品が教えてくれた気がします。家事や育児で、ゆっくり座って観る時間がない方も、どうか気にせず流してみてください。覚えていなくても、ちゃんと何かが残っていますから。喜好
苦手な人への入口
大きな事件が起きないお話は退屈かも、と思う方もいるでしょう。そういう方には、真剣に観ないことをおすすめします。家事や片づけをしながら、背中で流しておく。ふと顔を上げたときに、きれいな水の街が映っていたら、それで十分です。気づいたら、次の回もかけていると思います。眠ってしまっても大丈夫です。私もしょっちゅう、タオルを握ったまま眠っています。目が覚めたら、また最初から流せばいいんです。
ゲンさんは、この作品を流していると、たいてい十分もしないうちに隣で寝てしまいます。子どもたちには「お母さんのアニメは眠くなる」と言われています。それでいいんです。家族みんなが安心して眠くなれる作品なんて、そう多くはありませんから。喜好
ほかの6選とのつながり
日曜の夕方の『ちびまる子ちゃん』が子どものころの私の一週間の終わりだったように、この作品はいまの私の一日の終わりです。『甘々と稲妻』で台所に立つ人の顔を見て、『ARIA』で一日の力を抜く。台所番の毎日は、そのくり返しでできています。喜好
内容を覚えていなくても、肩の力が抜けたなら、その作品はちゃんとあなたの役に立っています。