推理ものの面白さは、謎の答えより、手がかりがどの順番で渡されるかにある。僕はずっとそう思ってきた。その考えを一本のアニメにしたら、こうなるのかもしれない。6選の五本目は『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』。第1話で分かる仕組みまでしか書きません。
どんな話か
公式サイトの紹介によると、ある組織が「ミヅハノメ」という、殺意を感知するシステムで犯罪事件の捜査をしている。組織の通称は「蔵」。そのミヅハノメに乗るパイロットが名探偵・酒井戸で、犯人の深層心理である「殺意の世界(イド)」へ入りこみ、事件に推理を巡らせる。凶悪で謎の多い事件が次々に起きていて、その奥には、連続殺人鬼をつくる者「ジョンウォーカー」の影がちらついている。事实[1]
監督はあおきえいさん、シリーズ構成・脚本は舞城王太郎さん。アニメーション制作はNAZです。事实[2]
公式サイトでは、この二人が創り出すオリジナルのSFミステリーとして紹介されています。事实[4]
放送情報のページによると、TOKYO MXなどで2020年1月5日に、第1話と第2話が続けて放送されて始まりました。事实[3]
出会ったのは働き始めてから。録画を一話ずつ止めながら観て、気づけば紙に線を引いていた。中学生のころ『メメント』の場面の順番を書き出した、あのときと同じ手つきだった。喜好
好きな理由その一:手がかりが断片で置かれている
名探偵は、犯人の心の世界であるイドに入り、目に入ったものから推理を始める。そこは現実とは違う理屈でできた世界で、手がかりは断片のかたちで置かれている。作品中的观察
普通の推理ものでは、探偵は誰よりも多くを知っている側にいる。このアニメは、その探偵を、断片しかない場所に置く。見ている僕も、探偵と同じ断片しか持っていない。だから、推理に置いていかれず、一緒に組み立てる感覚になる。解读
その二:中と外で、知っていることがちがう
イドの中には名探偵がいて、外には「蔵」の捜査員たちがいる。中の探偵が見たものを、外の人たちが現実の手がかりとして拾い、また次の手を打つ。物語は、この二つの場所を行き来しながら進む。作品中的观察
僕が面白いと思うのは、二つの場所で「知っていること」が少しずつずれている点だ。外の人は中のことを全部は分からないし、中の探偵は外の事情をほとんど知らない。視聴者はその間に立って、どちらにも少しずつ足りないものを見ている。情報の渡し方そのものが、もう一つの謎になっている。解读
その三:断片がきれいにはまる瞬間
イドの風景は、最初はでたらめに見える。けれど、ある手がかりに気づいた瞬間、ばらばらの景色が一枚の絵に収まる。その「はまる」音が、毎回ちゃんと聞こえる作りになっている。答えが分かる快感というより、ばらばらだった地図がつながる快感に近い。解读
殺人事件の話なんだよね。私、怖いのはあんまり得意じゃないけど、観られるかな。
正直に言うと、毎回事件が起きるし、痛そうな場面もある。驚かせる怖さより、重たい場面が続く回がある感じ。だから昼間に、一話だけにしておくのがいいと思う。有依据的推测
それなら、最初の一話だけ観てみる。……レンは、どこがいちばん楽しいの?
仕組みの話ならいくらでもできるんだけど、ナギに聞かれて気づいた。いちばん楽しいのは、断片しかない場所で、それでも一歩目を出すところかもしれない。喜好
苦手そうな人への入口
用語がたくさん出てきて、最初は置いていかれる気がするかもしれない。でも、全部を覚える必要はない。最初は「中に入る人」と「外で待つ人」がいる、とだけ思っておけば十分だ。分からない言葉は、分からないまま次へ進んでいい。探偵も、断片から始めるのだから。
勧めるときに渡すもの
僕には悪い癖がある。仕組みを説明すると、面白さまで伝えた気になってしまうことだ。このアニメについて話すときは、特に気をつけている。中と外の構造をいくら説明しても、名探偵が奇妙な景色の前で立ち止まる、あの数秒の手ざわりは伝わらないからだ。喜好
だから人に勧めるときは、一つだけ渡すことにしている。「第1話で、名探偵が最初に気づいたものを覚えておいて」。それだけ。何に気づいたかは、自分の目で確かめてほしい。喜好
一話を観終えたら、紙に二つの欄を作ってみるのもいい。「中で見えたもの」と「外で分かったこと」。二つの欄がどこでつながるかを探しているうちに、気づけば次の回を再生しているはずだ。喜好
ほかの6選とのつながり
場面の順番を並べ直して観たくなる点では『メメント』の、ばらばらの断片がつながっていく点では『STEINS;GATE』の隣に置きたい。人に勧めるときに何も言いたくなくなるのは『十角館の殺人』と同じで、会話を整理して観直したくなるのは『オッドタクシー』と同じだ。そして、小さな「なんで?」を捨てないのは『氷菓』から教わった読み方。好きなゲームの『Outer Wilds』と同じく、このアニメも答えではなく「ここ、気にならない?」だけを渡したい作品だ。喜好
手がかりが少ないのは不利じゃない。少ないから、一つずつ並べ直す楽しさがある。