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『俺だけレベルアップな件』の縦読み漫画を、本編の最後の話まで読んだ人に向けた二周目の話。手がかりは二つ。一つは、主人公の前に初めて窓が開く場面で、誰が何を決めたか。もう一つは、題名の「俺だけ」。中盤の展開は一段目、正体と結末は二段目に畳んである。まだ読み終えていない人は、畳んだところは開けずに戻ってきてほしい。
二周目は止める場所がちがう
一周目は、だいたい倍速の気分で読んだ。戦いの場面は流して、分からない所だけ指を止める。いつもの読み方。二周目は止める場所が逆になった。戦いはもう知っているから流せる。止まるのは、一周目に流した、何も起きていないように見えたコマのほう。大学の製図の夜に一話ずつ読んでいたころは、そういうコマを全部、次の話への通路だと思っていた。喜好
最終話を読み終えた夜、閉じずにそのまま一話目まで戻った。縦読みは、一番上まで戻るのが速い。一話目の旬の顔を見て、最終話の旬と同じ人だとすぐには思えなかった。猫背で、目が下を向いていて、包帯が多い。二周目は、この顔から始まる。作品中的观察
二周目は、一日一話と決めずに、気になった所で何度も戻った。縦読みは、指を上へ戻せば何話でもさかのぼれる。一周目は下へ下へと進むだけだった画面を、二周目は上へ上へと何度もたどった。その往復のうちに見えてきたものを、ここから順に書く。喜好
二周目の大半は、平日の昼休みに読んだ。おにぎりを片手に、一話読んで、気になったコマまで指で戻る。一周目の夜の読み方より遅い。でも、昼の明るさで見ると、ダンジョンの暗い場面の黒が、夜より細かく見分けられた。読む時間帯を変えるだけで、同じ絵から拾えるものが変わる。喜好
社会人になってから読み返すと、一周目と違うところで止まる。大学のころは、旬がどれだけ強くなるかを追っていた。いまは、旬が報酬の額を確かめたり、家の場面に戻ったりする、仕事と暮らしのあいだのコマで止まる。働いて、給料をもらって、それで家族の何かを支える。その手ざわりが、自分の毎月の数字と同じ形をしていると分かったのは、二周目になってからだった。喜好
これから二周目に入る人に、俺がやった順番を一つだけ書いておく。最終話を読んだら、間を空けずに一話目へ。一話目を読んだら、畳んだ中盤のどこか一か所へ飛ぶ。そこからは頭から順に。最後にもう一度、最終話。行ったり来たりは、遠回りの読み方。でも、この漫画は遠回りしたぶんだけ、同じコマの中に入っているものが増える。喜好
一話目で窓が開くまで
始まりはこう。ゲートと呼ばれる通路の向こうのダンジョンで、怪物と戦う人たちがハンターと呼ばれる世界。水篠旬は、いちばん下のE級で、「人類最弱兵器」というあだ名で笑われている。それでも、病院で眠りつづける母の治療費のために、危ない仕事から降りられない。ある日、ランクの低いはずのレイドの途中で、旬たちは高いランクの二重ダンジョンに行き当たる。事实[1]
そこで死にかけた旬の前に、正体の分からない窓が開く。課題を受けるかどうかを聞いてくる窓。命が尽きかけた中で、旬は受けると決める。そこから先、上がっていく数字を持つのは、ハンターの中で旬一人になる。事实[3]
一周目の俺は、この場面を、運よく当たりを引いた場面として読んだ。窓のほうが旬を選んでくれた、という読み方。二周目に目が行ったのは、窓が「受けるか」と聞いていること。押しつけるんじゃなくて、聞く。そして答えたのは旬のほう。この漫画の最初の「俺だけ」は、能力が降ってきた瞬間じゃなくて、死にかけた人が自分で返事をした瞬間に始まっている。解读
就職活動のころ、内定の連絡をもらって、返事をするまでに一晩かかったことがある。受けるかどうかを聞かれて、自分で答える。窓の前の旬は、それを死にかけた体でやっている。二周目の一話目は、そのコマの前で、自分の一晩より長く止まった。喜好
二重ダンジョンにいたのは旬だけじゃない。一周目の俺は、一緒にいたハンターたちの名前を一人も覚えなかった。旬の物語を早く先へ進めたかったから。二周目は、その人たちが映るコマを一つずつ見た。あの場にいた全員が、それぞれの理由で危ない仕事に来ていた。俺は今回、その人たちの顔を覚えたまま先へ進んだ。一周目には背景だった人たちが、二周目には、旬と同じ日に同じ場所で死にかけた人たちとして見えてくる。窓が開いたのは旬の前だけでも、怖さは全員のものだった。喜好
结局·真相窓の向こうにいた者(正体)点击展开
結末まで読むと、旬の前に窓が開いたのは、くじ引きの当たりではなかったと分かる。影の君主が、自分の後を継ぐ者として旬を選び、育てていた。旬は最後には、影の君主の座を受け継ぐ。
選ばれた、と知ってから一話目に戻ると、窓の「受けるか」という問いが、別の重さで読める。選ぶ側は先に決めていた。それでも、受けるかどうかの返事だけは、旬に残されていた。俺はこの漫画を、選ばれた人の話というより、選ばれたあとに毎回返事をしつづけた人の話として二周目を読んだ。事实[2]
一度測ったら変わらないランク
この世界のハンターは、内側の力を測られて、S級からE級までのランクに分けられる。そして本来、いったん目覚めた力は伸びないし、ランクも変わらない。旬の話は、この決まりの外に一人だけ出る話として始まる。事实[1]
仕事で測り直しをする人間から見ると、一回測った値が一生変わらない世界は、かなり怖い。測り直しは、疑うためじゃなくて、変わったかもしれないから確かめるためにやるもの。この漫画は、その怖い決まりを最初のほうに静かに置いておいて、旬一人だけを決まりの外に出す。二周目は、外に出た旬より、決まりの中に残っている人たちの顔を見ていた。解读
毎日続けているソシャゲのアカウントは、ログインするだけで少しずつランクが上がる。上がる量はわずかでも、昨日の数字のままでは終わらない。それが当たり前の側から読むと、目覚めた日の数字で一生が決まる世界の息苦しさが、一話目の時点でもうはっきり分かる。旬以外の人たちは、その息苦しさの中で、毎日ダンジョンに入っている。解读
中段为止中盤の展開(ギルドのこと)点击展开
旬は、大きな建設会社の会長の次男で、D級ハンターの諸菱賢太と一緒にギルドを立ち上げる。賢太は副マスターとして旬の隣に立つ。
二周目の俺が気になったのは、賢太の側の決まり。賢太の力は、たぶんこの先もそんなに伸びない。それを分かったうえで、伸びつづける人の横に立つことを選んでいる。決まりの外に出た人の物語に、決まりの中にいる人が自分の足で入ってくる。賢太が高そうな装備でがちゃがちゃ現れるたびに、一周目は笑っていた。二周目も笑う。ただ、笑ったあとに一回、賢太の顔のコマで止まる。事实[1]
中段为止中盤の展開(ギルドのこと・二)点击展开
賢太は、父親に買い与えられた高価で珍しい装備を身につけて現れる。その装備のせいで、ほかのハンターから警戒されることもある。
一周目は、ここを笑いどころとしてだけ読んだ。二周目は、親にもらった装備で身を固めている人が、親から離れて自分で旬の横を選んでいることのほうが気になった。持たされたものと、自分で選んだもの。賢太の中には、その二つが一緒に入っている。事实[1]
中段为止中盤の展開(ランクのこと)点击展开
旬はやがて、S級として認められる。世界を見渡しても、その級にいるハンターはわずかしかいない。変わらないはずのランクが、旬の場合だけ動いた、ということになる。
二周目の俺は、ここで一回止まった。S級として認められた、ということは、一話目で「最弱」と書かれた値を、誰かがもう一度確かめた、ということでもある。確かめる人がいなければ、旬はずっと最初の値のまま記録に残っていた。変わったことを認めてもらうのにも、確かめる手間が要る。事实[1]
家族の場面はどこに置かれているか
旬の家族は、眠りつづける病気で入院している母と、まだ学生の妹。父は、ずっと前にダンジョンの中で行方が分からなくなっている。戦いの話の合間に、家の場面と病室の場面が短く挟まる。事实[1]
母の病は、ふつうの病気ではない。ゲートが開いてから、空気の中の魔力にさらされつづけることで起きる、眠りから覚めなくなる病だとされている。旬が危ない仕事から降りられない理由は、この世界そのものが作った病の側にある。事实[1]
一周目は、母の病気を、旬に戦う理由を持たせるための設定だと思って読んでいた。二周目は、ゲートのある世界の暮らしの重さとして読んだ。怪物と戦うハンターだけじゃなく、ただ暮らしている人の体にも、ゲートの影響が出ている。旬の家の病室は、ダンジョンの外にある、もう一つのダンジョンみたいに見えた。
一周目は、家の場面を、戦いと戦いのあいだの息つぎだと思っていた。二周目に数えてみると、旬が強くなる理由が言葉になる場所は、たいてい戦いの場面じゃなくて、こっちの短い場面のほうにある。そこを流すと、旬がなんで降りないのかが分からなくなる。俺はこの漫画を、強さの話というより、家族の場面を守るための長い通勤の話として二周目を読んだ。解读
俺も、母と二人の家で育った。家の中の会話は短くて、そのかわり、段取りのほうがよく見えていた。旬の家の場面が短いのは、話すことが少ないからじゃなくて、短くても通じる家だからだと、二周目は読んだ。短い場面ほど、そこにいない人の分の空白がよく見える。解读
妹の場面も、二周目に見え方が変わった。妹は、傷を作っては帰ってくる兄の体を、いつも気にかけている。兄が強くなっていくのを、家の中でいちばん近くにいながら、いちばん遅れて知る人。一周目は、妹の心配を、強くなる前の旬を引き立てるための台詞だと思っていた。二周目は、妹が見ている兄が、読者が見ている旬よりいつも少しだけ前の旬だということが気になった。解读
お金の場面も、二周目は少し長く見た。治療費のために危ない仕事を続ける、というのは一周目には設定の一行だった。いまの俺は、給料日と家賃と、ソシャゲに月いくらまで、を毎月数えている。数える側に回ってから読むと、旬が報酬の額を確かめるコマの重さが、前と違って見えた。強さの話の下に、ずっと家計の話が流れている。解读
中段为止中盤の展開(母のこと)点击展开
旬は、眠りつづける母を治せるかもしれない薬の材料を求めて、新しい戦いに入っていく。そして母を目覚めさせる手段を、自分の手で手に入れる。
二周目は、ここに来るまでに病室が何回描かれたかを、数えながら読んだ。数が増えるほど、母のための戦いの一コマが重くなる。病室の場面を流した一周目より、二周目のほうが、この場面で長く止まった。事实[5]
结局·真相父のこと(結末にかかわる)点击展开
行方が分からなかった父は、やがて戻ってくる。次元のはざまに取り残されたあと、支配者と呼ばれる側の力を預けられ、その器として。父は旬の戦いに力を貸し、最後は旬のそばで命を終える。
一周目は、父が戻ってくるまでの長いあいだ、家の場面に父の席が空いたままだということを、ほとんど気にしていなかった。二周目は、その空いた席が最初からずっとそこにあったように見える。俺は、父のいない家の静けさを少し知っているから、そこは等速で読んだ。事实[1]
後ろに並ぶもの
中段为止中盤の展開(旬の力)点击展开
転職のクエストを越えた旬は、影の兵士を従える職業、影の君主を手に入れる。倒した相手の影を抜き出して、自分の兵にする力はここから始まる。その影たちは、ほかのハンターが呼び出すものと違って、成長し、言葉を話すものまで出てくる。事实[5]
中段为止中盤の展開(兄弟のこと)点击展开
中盤には、兄の死に旬が関わっていると疑い、復讐を誓うS級のハンターも出てくる。その兄は、人数合わせに雇った下のランクのハンターを使い捨てにしていた男だった。
二周目は、この兄弟と、旬と妹の兄妹を並べて読んだ。どちらの家にも、家族のために動く人がいる。ただ、その動き方がまるで違う。旬が妹の前で弱いままの兄でいようとするのと、この弟が兄のために全部を壊しにくるのと。家族のための強さが、どっちを向くかで別のものになる。事实[1]
中段为止中盤の展開(アニメの区切り)点击展开
アニメの第1期の最終話は、この転職のクエストの回で、題は「Arise」。縦読みで二周したあとにこの題を見ると、アニメの一期全体が、影を呼び起こす一言に向かって組まれていたように読める。事实[4]
中段为止中盤の展開(旬の力・読み)点击展开
影の兵は、旬の後ろに並ぶ。前に出るのは、呼ばれたときだけ。一周目は、数が増えるたびに強さが足し算されていく面白さで読んでいた。二周目は、並び方を見た。最初は一人だった後ろが、少しずつ埋まっていく。最弱のころの旬の後ろには、誰も並んでいなかった。二重ダンジョンで死にかけたときも、後ろは空っぽだった。
影を呼び起こすときの一言が、俺はこの漫画でいちばん好きな一言かもしれない。短い。命令というより、呼びかけに近い。呼ぶ側と呼ばれる側の関係が、その一言で決まる。解读
このあたりから、旬が「最弱」というあだ名で呼ばれる場面は減っていく。呼ばれ方が変わるのを、二周目は一話ずつ追った。誰がいつ、旬をどう呼んだか。それだけで、物語の地図がもう一枚できる。解读
一周目に流した一場面
中段为止中盤の展開(ある戦い)点击展开
転職のクエストの途中、旬は赤い騎士と一対一で戦い、追いこまれながら倒す。この騎士は、のちに旬の影の兵の一人になる。
一周目は、ここを強い敵との一騎打ちとしてだけ読んだ。剣の速さと、旬がどこで追いつくか。二周目は、騎士が最後に旬の前で見せる態度のほうで止まった。事实[4]
二周目に気づいたのは、この漫画の大きな節目に、旬が一人きりで向きあう場面がよく置かれていること。一話目の二重ダンジョンでも、ほかのハンターたちはそばにいたのに、窓が開いたのは旬の前だけだった。題名の「俺だけ」は、能力の説明であると同時に、場面の作り方の説明でもあったのかもしれない。解读
一人きりの場面が節目になるのは、読む側の俺の手元とも重なっていた。縦読みは、誰かと一緒に読むものじゃない。画面は一つで、指も一本。旬が一人で何かに向きあうコマを、俺も一人で、片手の画面で見ている。一周目は気にしなかったその重なりが、二周目はずっと続いていた。解读
结局·真相騎士の役目(正体にかかわる)点击展开
結末を知ってから読み返すと、あの騎士は、影の君主の後を継ぐ者が来たときに、その相手を試す役目を負っていたように読める。旬は試された側で、騎士は試す側。そして試験が終わると、騎士は新しい主の後ろに立つ。
一周目に流したあの一騎打ちは、試験が終わった合図じゃなくて、後ろの列の一人目が決まった合図だった。解读
「俺だけ」がもう一度来る
題名の「俺だけ」は、一周目には説明書きに見える。レベルが上がるのは俺だけ。窓が見えるのは俺だけ。始まりの数話は、その意味だけで十分に読める。解读
中盤まで来ても、「俺だけ」はまだ能力の話のまま読める。旬だけが強くなり、旬だけが窓を見る。ただ、同じ字が繰り返されるうちに、少しずつ手ざわりが変わってくる。誰にも言えないことが増えていく人の「俺だけ」。家族にも、ギルドの仲間にも、窓のことは言わない。一周目の俺は、そこを秘密を持つかっこよさとして読んでいた。二周目は、言わないでいることの重さのほうで読んだ。解读
好きなものを人に勧めない、聞かれたら答える。俺はそういうふうに好きなものを持っている。だから、窓のことを誰にも言わない旬の気持ちは、少し分かる気がした。言わないのは隠したいからじゃなくて、言葉にした瞬間に、自分だけのものじゃなくなる気がするから。二周目は、旬が言いかけて言わないコマを探しながら読んだ。喜好
结局·真相影の君主の出自(正体)点击展开
旬に力を渡していた影の君主は、もとをたどると、闇の側ではなく光の側の出だった。神に作られた光の使者の中で、最も眩しい欠片と呼ばれた存在。それが、君主の側に回って、最後には旬を後継に選ぶ。
元をたどる癖のある俺は、ここで一晩止まった。いちばん暗い名前を持つ力の、いちばん元が、いちばん明るい場所にある。名前と出どころが逆向きになっている。事实[1]
结局·真相最後の敵点击展开
最後に立ちはだかるのは、竜を統べる破滅の君主。君主の中で最も強い者として、旬の前に現れる。事实[1]
结局·真相結末と「俺だけ」(結末)点击展开
最後まで読むと、二周目の「俺だけ」は意味が変わる。一周目は、強くなれるのが俺だけ、だった。最後まで読むと、影の君主に選ばれて、その座を継いだのも俺だけ、になる。題名は最初から最後まで同じ字なのに、読む順番で中身が入れ替わる。
だから二周目は、一話目の窓の前の旬に、最後の戦いに向かう旬を重ねて読んだ。死にかけて一人で返事をした人が、最後にもう一度、一人で返事をしに行く。始まりと終わりが、同じ形で一人。解读
畳んだところを読んだ人なら、二周目の一話目は、もう別の話として読めると思う。一周目に「俺だけ」を読み流した人ほど、二周目の一話目で手が止まる場所が多いはず。俺は、題名を読み直すために一話目に戻った。解读
読み終えた話の一コマだけを、誰にも送らないフォルダに入れる癖がある。一周目にこの漫画から入れたのは、最終話の一コマだった。二周目は、一話目の一コマを入れた。いまフォルダの中で、その二枚が隣どうしに並んでいる。どのコマかは書かない。二周目を読み終えた人なら、たぶん同じ二枚を選ぶと思う。喜好
小説と縦読みとアニメの位置
元をたどる癖で、版の並びも一度整理しておく。いちばん元にあるのは、Chugongが書いた小説。韓国のカカオページで連載が始まった。縦読みの漫画はそのあとで、作画はDUBU。同じカカオページで連載され、途中に数か月の休みを挟んで、完結までたどり着いている。事实[1]
日本語で読める縦読み版はピッコマで連載されていて、登場人物は日本の名前で呼ばれている。旬も、韓国語の元の版では別の名前を持っている。一人に名前が二つ。版をまたいで読むと、同じ台詞が少し違う響きで聞こえる。事实[1]
アニメは、A-1 Picturesが制作して、二年続けて冬から春にかけて放送された。事实[1]
俺にとって縦読み版は、自分の指で速さを決める版。アニメは、間と音を作り手が決めてくれる版。小説では、絵の一コマで済んでいる顔が、考えごとの列になって並ぶ。どれが上ということじゃない。同じ話に、入口が三つある。二周目を縦読みでやったあとにアニメの神殿の場面を観ると、自分で決めていた速さと、作り手が決めた速さの差が分かって面白い。解读
アニメは、縦読みで二周したあとに観た。知っている場面に音がつくと、自分が頭の中で鳴らしていた音との違いがよく分かる。窓が開く場面は、俺の頭の中ではもっと静かだった。どっちが合っているという話じゃない。読んだ人の数だけ、頭の中の音がある。アニメは、そのうちの一つを作り手が決めて見せてくれた版だと思っている。喜好
版を並べるときに、どれを先に読むかで迷う人もいると思う。俺は縦読みが先で、アニメはあとから観た。逆の順番の人は、二周目を縦読みでやると、アニメで知った場面を自分の速さで読み直すことになる。順番に正解はなくて、二周目の入り方が変わるだけ。喜好
線を描いた人のあとで
縦読み版の作画を担ったDUBUは、本編の完結からしばらくして、病気で亡くなっている。そのあと、新しい作画の手で、外伝の漫画が始まった。事实[1]
作り手をたどるのが癖の俺は、ここで手が止まった。俺が二周した線は、もう同じ手からは増えない。だから二周目は、絵の側にも目が行った。暗い通路の黒の塗り方。影の兵が並ぶコマの、一人ずつ違う輪郭。一周目は物語のほうを追っていて、線を見ていなかった。最後まで読んで、一話目に戻って、やっと線を見た。縦読みは一度に一コマしか画面に入らないから、二周目のほうが、描いた手の近くまで寄れる。三周目をやるなら、今度は最初から線のほうを追って読むと思う。物語は、もう覚えているから。暗い場面ほど、線の数が少なく見える。少ない線で暗さを出しているように見えて、そこで長く止まった。喜好
外伝のほうは、まだ読みはじめたところ。中身はここでは書かない。ただ、本編を二周したあとで外伝の一話目を開くと、線の手が変わったことが、一コマ目で分かる。分かったうえで、同じ人物が同じ顔に見えるように描かれている。それが、いちばん手間のかかる仕事だと思う。前の人の線を知っている人間が、前の人の線に寄せて描いている。元をたどる癖のある俺には、それが一つの道筋に見えた。描いた人から、次に描く人へ。解读
二周目は一話目の、死にかけた旬の前に窓が開く場面から。受けるかどうかを決めたのは、旬のほうだった。
