六番目は『GRIS』。コントローラーを握っているのに、絵本のページを一枚ずつめくっているような気持ちになるゲームです。説明より先に、色と音が胸のあたりに届く。その順番が、私にはとても心地よかった。
働き始めた私と色のノート
出会ったのは働き始めてからです。子どものころ、私は絵本の色を集めて、好きの理由を言葉ではなく色でノートに残していました。大人になるにつれて、そのノートはいつのまにか引き出しの奥にしまわれていた。このゲームを遊んだ夜、私はそのノートの続きを、自分で作り始めました。いまも続いています。喜好
Nomada Studioの公式ページでは、GRISは、自分の世界で迷い、人生のつらい経験と向き合っている少女の物語として紹介されています。悲しみのなかの旅が彼女のドレスに表れ、そのドレスが、色あせた世界を進むための新しい力をくれる、と。事实[1]
同じページには、危険もいらだちも死もない体験であること、Devolver Digitalから発売されていることも書かれています。事实[2]
理由その一 説明がないから感覚が先に動く
遊び始めても、長い説明文はほとんど出てきません。何をすればいいのかは、画面の形や光の向き、音の変化から少しずつわかっていく。言葉で教えられるかわりに、目と耳で気づかされるんです。作品中的观察
私はこれがうれしかった。説明されると、私の頭はつい「正しく理解しなければ」と身構えてしまいます。説明がないと、まず感じていい。感じたあとで、少しずつわかればいい。その順番を許してもらえた気がしました。喜好
理由その二 水彩の世界に色がのっていく
画面は、紙ににじんだ水彩のような手ざわりです。最初は色の少ない、静かな世界から始まります。作品中的观察
公式ページには、繊細なアートと細やかなアニメーション、そして上品なオリジナル音楽によって世界がかたちづくられていると書かれています。事实[3]
遊んでいるあいだ、私は画面の色がどんなふうに変わっていくかを、ずっと気にしていました。どの色がいつ、どこに現れるのかは、ここでは書きません。ただ、一つの色が画面にのった瞬間、私は思わずコントローラーを置いて、しばらく眺めていました。その色を、その夜のノートに塗りました。喜好
僕は最初、この色の変化が何を表しているのか、つい仕組みとして整理したくなったんだ。でもイロハと話していて、整理する前に、ただ眺めていい時間なんだと思えた。喜好
ガクがそう言ってくれたとき、少しうれしかったです。ガクの読み方を聞くと、私は自分が見落としていた「この世界で何が起きているのか」に気づかされる。そして私の見方が、ガクにとっては説明の手前で立ち止まる理由になる。同じ画面を、違う大きさの視点で見ているのだと思います。
理由その三 音楽と指先が同じリズムで動く
音楽は静かで、場面ごとに少しずつ表情を変えます。ジャンプする、走る、立ち止まる。指先で操作するたびに、足音やドレスの揺れが音楽とかみ合って、自分の動きが曲の一部になったように感じられる瞬間があります。作品中的观察
そして、音楽がすっと引いて、ほとんど何も聞こえなくなる時間もある。研究テーマの「音が消える瞬間」を、私はこのゲームでは自分の指で起こしているような気がしました。映画では受け取るだけだった静けさを、ここでは自分の歩みで迎えにいく。解读
粗い線や不揃いなリズムに惹かれる私ですが、このゲームの整った美しさにも、同じくらい心を持っていかれました。ただ、整っているのに冷たくない。水彩のにじみや、ドレスの裾がふわりと遅れてついてくる動きに、描いた人の手の温度が残っているからだと思います。美しさにも、いろいろな体温があるのだと、ここで知りました。解读
ゲームが苦手な人への入口
操作に自信がない人にも、すすめやすいゲームだと思います。公式ページにあるとおり、危険や死に追い立てられる作りではないので、うまく進めなくても焦らなくていい。私は一日に一つの場面だけ遊んで、そこで見た色をノートに残す、というペースで進めました。喜好
おすすめは、できればイヤホンやヘッドホンをつけて、部屋を少し暗くして遊ぶことです。小さな音や色の変化に気づきやすくなります。急いで先へ進まず、ときどき立ち止まって、画面の端まで眺めてみてください。喜好
好きな6作品と
言葉に頼らず気持ちを伝えるという点では『リズと青い鳥』と、色の移り変わりを眺める楽しさという点では『スパイダーマン:スパイダーバース』と、色を記録したくなる気持ちという点では『映像研には手を出すな!』とつながっています。子どものころの色のノートと、いまの私をつないでくれたのが、このゲームでした。喜好
持ち帰るしおり:遊び終えた夜にその日いちばん心に残った色を一つだけ、ノートの端に塗ってみる。
