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四作目は『十二国記』です。中学生のときに出会って、大人になってからも何度も読み返しています。読み返すたびに、引き受けるということの重さが、少しずつ違って見える。そんな本です。展開や登場人物のその後には触れません。
地図の上にない国々
小野不由美さんによる、長く読み継がれてきたシリーズです。
公式サイトの紹介では、舞台はわたしたちの世界と、地図のどこにも載っていない異世界〈十二国〉です。〈十二国〉で王を見つけるのは、天意を受けた霊獣の麒麟。国を治めるのは選ばれた王で、麒麟はその補佐役です。事实[2]
幼いころ空想の地図ばかり描いていた僕にとって、これはたまらない設定でした。地図の端に、まだ誰も描いていない国がある。しかもその国々には、それぞれ違う決まりごとがある。中学生の僕は、ノートに十二の国を並べて、わかったことを書き込みながら読みました。喜好
好きな理由1:国ごとにしくみが違う
公式サイトの紹介文によれば、この物語では国ごとに気候も慣習も政治の形も違います。その一つひとつの国で、町に暮らす民や、政変にもてあそばれる王、理想を胸に燃やす官吏たちの姿がつづられていく、と書かれています。事实[3]
僕が惹かれるのは、まさにこの「違い」です。同じ世界の決まりのもとにありながら、国によって暮らしの空気がまるで違う。土地の分け方や、役人の働き方、民が王をどう見ているか。ファンタジーなのに、制度の話がこんなにも生活の手ざわりと結びついている。僕の中で「よくできた世界設定」の意味が、ここで変わりました。解读
好きな理由2:英雄の物語ではなく引き受ける人の物語
好きなキャラクターに挙げている中嶋陽子は、第1作『月の影 影の海』で、ごく普通の高校生として登場します。ある日いきなり知らない世界に放り出され、右も左もわからないまま歩き出す。最初から強いわけでも、正しいわけでもありません。むしろ読んでいて歯がゆくなるほど、迷い、怖がり、自分の弱さと向き合う時間が長く描かれます。作品中的观察
でも僕は、だからこそこの人を信じられるんです。責任は、ある日突然かっこよく背負えるものではない。重さに気づき、逃げたくなり、それでも少しずつ自分の手に移していく。その過程を、この物語は省略しません。中学生の僕は、責任を背負う人を「最初から立派な人」だと思っていました。この本を読んで、その見方がひっくり返りました。解读
好きな理由3:言葉が国を建てている
官職の名前、儀礼の呼び方、土地の言葉。文章には漢字の語彙がたっぷり使われていて、最初は辞書を引きながら読みました。でも、その硬い言葉づかいが、この世界の歴史の厚みを支えている。新しい国の名前が出てくるたびに、その国の役所の扉をひとつ開けたような気持ちになります。喜好
好きな理由4:民の側の一日
王や官吏の話と同じくらい、僕が心をつかまれるのは、名前も大きく扱われない民の暮らしです。畑のこと、税のこと、旅の途中で泊まる宿のこと。国が荒れているのか、落ち着いているのかが、町の様子や人の口ぶりから伝わってくる。王宮の決定が、遠くの村の食卓にどう届くのか。その距離を想像させる場面が、このシリーズにはたくさんあります。作品中的观察
町内会でたとえるなら、役員会で決まったゴミ出しのルールが、回覧板で回ってきて、朝の集積所でようやく自分のこととして実感される、あの距離です。決める人と暮らす人の間に、どれだけの手間と時間があるのか。僕の研究テーマ「英雄がいない場所の暮らし」は、この本を読み返すたびに少しずつ形を変えてきました。解读
しんどいって本当?
ガク、最初の一冊がつらいって聞いたことがあって、手が出せないままなんだけど、本当?
正直に言うと、本当。最初の巻の前半は、主人公がひとりで知らない土地を歩く場面が長くて、気持ちが落ち込む描写も多い。僕も中学生のとき、何度か本を閉じた。喜好
そっか。そう言ってもらえると、逆にちょっと読めそうな気がする。
疲れてる日は、一章だけで閉じていいと思う。急いで読み切らなくていい本だから。
入口は、僕は『月の影 影の海』からを勧めます。上下巻のうち、上巻は、読んでいて気持ちが沈む場面が続くかもしれません。そういうときは、一日一章と決めて、合間に短い動物の話でも挟みながら、ゆっくり進むのがいいと思います。僕自身、重い章のあとには、よく小さな動物コメディを観ていました。喜好
アニメで観るなら
スタジオぴえろが公式サイトに載せている情報では、テレビアニメ『十二国記』は全45話のシリーズで、1話は30分。NHK BS-2で、2002年4月9日から2003年8月30日まで放送されました。事实[4]
原作は小野不由美さん、キャラクター原案は山田章博さん、監督は小林常夫さんです。事实[5]
漢字の多い官職名や国の呼び名も、声で聞くとすっと入ってきます。国ごとに違う景色や装いが目で見えるのも、地図好きの僕にはうれしいところでした。ただ、主人公がひとりで迷う時間の重さは、アニメでもちゃんと重い。だから本と同じで、疲れている日は一話で止めていいと思います。30分で区切りがつくのは、むしろ味方です。喜好
本から入った人は「この国はこういう音がするのか」と、アニメから入った人は「この呼び名はこういう字なのか」と。行き来するたびに、頭の中の地図が一枚ずつ厚くなっていきます。喜好
ほかの6選とのつながり
『銀河英雄伝説』で「同じ出来事を両側から見る」ことを覚えた僕は、この本で「王の側と民の側の距離」を考えるようになりました。そして、責任を引き受けていく一人を追う読み方は、のちに『キャシアン・アンドー』で、大きな仕組みの中にいる一人を追う見方へとつながっていきます。読み返すたびに、自分がいま何を引き受けているのかを、少しだけ考えさせられる。それが僕にとってのこの本です。解读
持ち帰るしおり:最初の一冊はしんどくて当たり前。一日一章でいいから、引き受けていく人の歩幅に付き合ってみる。